再評価される芸人・鳥居みゆき「変わったのは世間の目、私は何も変わっていない」児童発達支援士の資格を取得し、番組では子どもたちをサポート
「児童発達支援士」「発達障害コミュニケーションサポーター」の資格を取得
近年では彼女を色眼鏡で見ず、その考えを尊重する現場が増えているという。 バラエティ番組『上田と女が吠える夜』(日本テレビ系列)で見せた巧みなトークは共感と笑いを呼び、それがネットニュースとしても取り上げられた。 また、発達障害を抱える子どもたちをサポートするNHK Eテレ『でこぼこポン!』での活躍、そして、番組をきっかけに「児童発達支援士」、「発達障害コミュニケーションサポーター」の資格を取得したというエピソードも、彼女の人間としての豊かさや向上心を世間に伝えたと言える。 「くりぃむしちゅーの上田さんからも、昔は“こいつ呼んだの誰?”で終わらせられてたのが、今はちゃんと内容を聞いてツッコんでくれるようになりました。 ちなみに児童発達支援士の話をするときには本当にみなさん、真面目に耳を傾けてくださる。それはそれでボケることができないんですけど(笑)。“面白いな、楽しいな”って思える現場が多くなりましたね」 芸人・タレントとしてようやく居心地のいい場所を見つけつつある鳥居だが、昔から唯一、話を聞いてくれた司会者として、意外な名前を挙げた。 「出会った当初から私の話をきちんと聞いた上でツッコんでくれていたのは、千原ジュニアさんです。“鳥居は、ちゃんと考えてるもんな”と会うたびに言ってくださって、本当に上司の見本みたいな存在。尊敬していますね。 私、争うのが大嫌いなのに『座王』(『千原ジュニアの座王』。椅子取りゲームとショートネタバトルがミックスされたバラエティ)のオファーを受けたのも、ジュニアさんが司会でいてくれるという安心感があるから。審査員にどんな審査をされようと、引っ張ってもらえると信じているんです。 『座王』がなんで椅子を奪い合うかはよくわかってないんですけどね。ジュニアさんは椅子に親でも殺されたんでしょうか?」
いまの子どもたちに笑ってもらえるのが嬉しい
鳥居みゆきの本領は、単独公演のひとりコントに代表される、“鳥居ワールド”とも言えるオリジナルな世界観。生と死をテーマに、自身の内面をどこまでも探求するような作風で根強いファンを持つわけだが、それはコントという形だけでなく、演劇の脚本や小説、絵本といった、様々なメディアで表現されてきた。 そんな彼女が、現在探求しているもの、それが他人とのコミュニケーションである。 「これまでは周りから拒絶されるし、じゃあひとりで楽しもうと思ってやってきたんですけど、ようやく自分の探究心が他人に向かうようになって、会話を楽しめるようになりました」 コミュニケーションに積極的になったのは、仕事の現場だけではない。13年連れ添ったのちに別れを選んだ元夫とは、離婚モードになった瞬間から予期しない前向きな変化が生じた。 「結婚していたときは、ふたりで住んでいるけどそれぞれが自分のテリトリーで、独立した生活をしていました。私も彼も、人として変われなかったんです。“これじゃ友だちと一緒だし、さらに仲が悪くなるくらいなら別れよう”と離婚の方向に進みました。 でも、それから落ち着いて話してみると、その時間が楽しいことに気づいたんです。楽し過ぎて、離婚届を出すのにも3回くらい失敗しました。役所に行く途中で見つけた物産展で買い物している間に届を出し忘れるとか(笑)。今も仲が良くて、離婚記念日には毎年、一緒にご飯を食べに行きます。だから、結婚していた時期だけが仲が悪かった」 芸人としての思想も、やっていることも変わっていないと断言する鳥居。 だが、彼女が人生経験を積み、他人とのコミュニケーションに前向きになったこと、そしてそれが時代の変化と重なって周囲から受け入れられはじめたことは、孤高の芸人であり続けた彼女の「受け皿」が、自然と広がった現状に繋がっている。 「こないだ営業で“ヒットエンドラン”のネタをやったんです。そうしたら、私のことを知らないだろう子どもたちが笑ってくれてました。それが嬉しかったですね。今年ですか? 何も変わらないと思いますけど、干支にちなんで“猪突猛進”で頑張ります!」 取材・文/森樹 写真/松木宏祐
---------- 鳥居みゆき(とりいみゆき) 鳥居みゆき サンミュージック所属。秋田県生まれ、埼玉県育ち。「ヒットエンドラン」ネタでネットから火がつき、2008年、2009年の『R-1ぐらんぷり』では2年連続で決勝進出。現在は、中川パラダイス(ウーマンラッシュアワー)とのコンビ「鳥居パラダイス」でも活動するほか、俳優として演劇や映画にも参加している。会員制サイト「鳥居みゆきの清き汚い世界」では、生配信やショートドラマの配信を定期的に行う。 ----------
鳥居みゆき