叱咤し、まとめ、勝たせる 主将とコーチ二足のわらじ 福岡大大濠
第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)第3日の22日、第2試合で大崎(長崎)との九州対決に臨んだ福岡大大濠の川本康平主将(3年)は、自身がプレーすることはない学生コーチだ。監督と選手のパイプ役になり、常にチームを引き締めるまとめ役。目指すのは4年前、同じく主将兼学生コーチとしてチームを引っ張り、センバツで8強入りした亀井毅郎さん(21)だ。 【写真】センバツ応援ポスターに小泉のんさん 小学2年の時に野球を始めた川本主将は福岡大大濠の中高一貫コースに入学。中学2年に上がる直前の2017年3月、センバツで8強入りしたのが亀井さんらの代だった。朝練で一緒にバットを振る機会もあり、甲子園を目指す気持ちが強くなった川本主将はより強いチームで腕を磨こうと中学の野球部を退部。地元のクラブチームでプレーし、高校での活躍を夢見た。 入学後は秋の1年生大会にレフトで出場するなどレギュラーを狙える位置にいたが、憧れの先輩の言葉が転機になった。「この学年で学生コーチを任せられるのはお前しかいない」。大学の長期休みで関西から帰省し、臨時コーチを務めていた亀井さんだった。 チームでは「生徒に主体的に取り組んでもらいたい」という八木啓伸監督(43)の意向で1学年に1人、学生コーチを置いている。普段からプレーはせず、練習のメニューを指示したり、部員たちが思っていることをまとめて監督に伝えたりするのが仕事だ。時には選手を叱咤(しった)しながら引っ張っていかなければならない難しい役割だが、1年生の冬に自ら八木監督にコーチになることを名乗り出た。周囲の「選手はもういいのか」と惜しむ声にも、川本主将は「自分で決めたことなので迷いはなかった」と振り返る。 就任後は、指示が伝わらず、同級生に厳しく接してしまい衝突することもしばしばだった。思い悩んだ時、亀井さんに電話やメールで相談すると「学生コーチ次第でチーム全体が変わるんだぞ」と励まされた。プレッシャーもあるが、川本主将は「やったことのある人にしか分からない感情や、つらさもいい経験だ」とやりがいを感じている。 川本主将にとって憧れの先輩だった亀井さんは、やがて「超えなければならない目標」になった。亀井さんたちの代以来、4年ぶりのセンバツ切符を勝ち取った今年のチームは一歩、その目標に近づいた。背番号18でベンチ入りした川本主将は「亀井さんの代を超えるためにも、まずは九州対決を勝ち抜きたい」との意気込みで試合に臨んだ。【大坪菜々美】