ホンダ・日産の経営統合はうまくいくのか…《積年のライバル同士》が越えなければならない「大きなハードル」
以前から噂されていた「経営統合」
12月18日、ホンダと日産自動車が経営統合の協議に入ると報道があった。両社の提携はかねてより専門家の間では噂されていた。 【マンガ】外国人ドライバーが岡山県の道路で「日本やばい」と驚愕したワケ ここへ来て経営状況の悪化が進み、台湾の鴻海(ホンハイ)精密機械から買収の動きも見られた日産にとって、あまり時間的余裕のない状況になっていたとみられる。 一方、ホンダも四輪車部門で、今後、EVやソフトウェア開発に多額の資金が必要となる中、これまでの独自路線を修正して、GMやソニーなど提携先を模索する動きがあった。今回の提携協議は、両社の思惑がある程度一致するところから始まったようだ。 そもそも今年8月、両社は電気自動車(EV)の開発など包括的な業務提携を交わしている。その時点で経営統合も視野に議論を進めていたとみられる。 実現すれば、トヨタグループ、独フォルクスワーゲングループに次ぎ、販売台数で世界3位の自動車企業連合が誕生する。両社にとって相応のメリットになるはずだ。 今回、日産とホンダは経営統合に向けて持ち株会社を設立し、その傘下に日産とホンダが入る体制を検討するようだ。将来的には、日産が出資している三菱自動車も経営統合に参画する方針とみられる。3社の経営統合は事業規模の拡大で経営体力が強化され、日産の窮状を打開する効果は期待できるだろう。 では、日産とホンダにはそれぞれどのような思惑があるのか。
日産とホンダのそれぞれの思惑
まず、日産はゴーン事件以降、企業イメージが悪化し、顧客離れが起きていた。 収益は減少傾向を辿り、大規模なリストラを実施せざるを得ない状況にも陥った。加えて、台湾の鴻海が、EV分野への展開を狙って日産へのアプローチを始めた。ルノーとの提携の例もある日産にとっては無視できない脅威だったはずだ。 その難局を切り抜けるため、日産は有力なパートナーを見つけて経営体力の強化を図ることが喫緊の課題となっていた。 方策の一つが、ホンダへの歩み寄りだ。今年8月、日産はホンダと包括的業務提携を締結し、EV部品や車載ソフトウェアなどの共通化に関する協議を開始した。おそらくすでにこの時点で、経営統合が話題に上がっていたのかもしれない。 完成車メーカーである日産の経営状況は、下請け、孫請け企業を含めた雇用、設備投資にも大きく影響する。政府としても、日産と他の日本企業の経営統合は相応の効果をもたらすとみるはずだ。過去の主要企業の経営再建の例を見ても、今後の展開次第では政府系の金融機関などが統合に係る支援を行う可能性もありそうだ。 課題を抱える日産と比べると、ホンダはそれなりに健闘しているといえる。 四輪車事業では国内と米国でハイブリッド車などの需要を取り込み、新興国などで好調な世界第1位の二輪車事業も業績の拡大を支えた。 ただし、中国市場ではEVシフト、価格競争激化により苦戦している。四輪車事業の今後の展開を考えると、EVへの移行など戦略実行体制の必要性は高まるだろう。それに加え、自動車のソフトウェア化に向けた研究開発、人材確保も急務だ。 ホンダとしても、EVや自動運転、車両性能向上のソフトウェア開発に経営体力の強化が必要不可欠だ。 経営統合が実現すれば、中・長期的なメリットが見込めるだろう。さらに三菱自動車も合流することで、わが国の自動車産業界はトヨタ勢とホンダ・日産連合の2極に再編されることになり、相応の存在価値が出るはずだ。