センバツ高校野球 明秀日立、初戦完勝 投打かみ合い観客魅了 /茨城
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第5日の23日、明秀日立は大島(鹿児島)と対戦し、8―0で完勝した。投打がかみ合った戦いぶりに、保護者やOBら約900人が大きな拍手を送った。2回戦は大会第8日第2試合で市和歌山(和歌山)と戦う。【長屋美乃里】 三塁側のアルプススタンドは、ジャンパーや帽子でスクールカラーである青色に染まり、猛打に沸き立った。 二回裏、佐藤光成(3年)の二塁打などで満塁とすると、本坊匠(同)が四球を選び押し出しの先制点。OBの孫大侑也さん(18)は「(佐藤は)本当に野球センスが良いな」と後輩の活躍に目を細めた。 続く平野太智(2年)は、左前適時二塁打を放って2点を追加。平野は「感触は悪くて打ち損じたが、うまく落ちてくれた」と胸をなで下ろした。 三回には、佐藤が内野安打で出塁すると、7番・小久保快栄(3年)が外角直球を右翼に運び適時二塁打。「当たりは悪かった」と振り返る一打だったが、追加点でチームはさらに勢いづく。四回には安打や四球で4点をあげて引き離した。 中盤以降は大島の大野稼頭央(同)が尻上がりに調子を上げて打線は沈黙。一方で猪俣駿太(同)も好投を続け、試合序盤に「本調子か心配」と話していた母睦美さん(43)の心配を吹き飛ばす。その後は両エースの力投で得点板に0が刻まれ続けた。 最終回には石川ケニー(3年)が登板。走者を出しながらも、最後まで点を与えなかった。スタンドから応援していた部員の山中竜雅(同)は「(石川は)肘の故障に責任を感じていた。粘って結局1点も取られず、キャプテンらしい投球だった」とたたえた。 ◇初舞台の副団長 ○…アルプススタンドでは、黒いワイシャツ姿の応援委員会がエールを送った。副団長の棚橋花帆さんは、自宅が高萩市にある野球部グラウンド近く。聞こえてくる部員たちの声に「頑張っているんだな」と感心するのが日常だった。3歳年上の兄源太さんも応援委員会OB。4年前のセンバツで声を張り上げる兄の姿に入団を決意したが、新型コロナウイルスの影響で試合での応援がなく、今回の甲子園が「初舞台」だ。「練習と立ち位置が違って合わせるのが難しい。次はちゃんと合わせたい」と話した。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇夢舞台でのヒット格別 明秀日立・佐藤光成中堅手(3年) 強打で打線を勢いづけた。4打数3安打2打点。殊勲の6番は「初球から思いっきり振っていく、自分らしい野球ができた」と振り返った。 この日の朝、母和江(ともえ)さん(43)に電話をかけた。試合前に電話するのは初めてのこと。心配した和江さんから「緊張したら深呼吸をして」と声をかけられると「大丈夫。いつも通りやるさ」と返した。電話を切り、バットを握ると緊張は消えていた。 試合では、二回裏から3打席連続安打。特に四回は2点適時二塁打で大島を突き放し、スタンドを沸かせた。 中学時代には、世界大会の経験もある。しかし、夢だった甲子園でのヒットは格別。打席でその喜びをかみしめた。 あと1勝すれば、世界大会でのチームメートがプレーする大阪桐蔭(大阪)と当たる可能性も出てくる。「次もチーム一丸となって戦う」。試合後に一瞬だけ笑みを漏らすと、すぐに表情を引き締めていた。