ステイシー・L・スミス、ケイト・ブランシェット、ココ・フランチーニ GETTY IMAGES

俳優のケイト・ブランシェットが南カリフォルニア大学に新プログラム「Proof of Concept Accelerator Program」を立ち上げることを発表した。女性やトランスジェンダー、ノンバイナリーの視点から物語を描く映画製作者たちを応援していくという。共同設立者は、ブランシェットと彼女の夫アンドリュー・アプトンと共に独立系映画会社「ダーティフィルムズ」を立ち上げているプロデューサーのココ・フランチーニと、同大学のステイシー・L・スミス博士。スミス博士は映画とテレビにおけるジェンダーを研究している。

ブランシェットは雑誌『ピープル』にプログラムを設立したきっかけを語っている。「私たちは業界が変わったと大口を叩いている。だから撮影現場に足を踏み入れるとき、私はそこが多様性に富んだ場所だろうと思い込んでいた。しかし自分がカメラの前だけでなく、撮影現場で唯一の女性であることがわかりがっかりした。怒りではなく失望を感じた」。そのとき「変化を起こそうとするときには満足してはいけない」と思い知ったという。

「女性の功績や努力が注目される瞬間がたくさんあったため、自分たちが変化したと私は思っていた。でもその後、博士がまとめたデータを見て『事態は迅速に動いていない』と思った」とブランシェット。スミス博士は「アネンバーグ・インクルージョン・イニシアティブ」を2008年に発足、映画業界のジェンダーやエスニシティ、LGBTQsなどの実態をレポート、多様性について考察する報告書を発表している。

ココ・フランチーニ、ケイト・ブランシェット GETTY IMAGES

「それが私たちみんなが自分たちの視点から認識している課題に取り組むのに役立つ、本当に機能的で機動力のあるイニシアチブを見つけようという動機になったのだと思う。これはとてもエキサイティングなイニシアチブだ」とブランシェットは語る。

このプログラムでは女性、トランス、ノンバイナリーの監督たちのキャリアを阻む3つの大きな障害－資金とメンターシップ、注目の不足－を解決することを目指す。まず最大8人の映画制作者を選び、長編映画やテレビシリーズの制作資金として5万ドル（約700万円）を提供する。さらに選ばれたそれぞれの製作者にメンターとして業界で活躍している監督たちが1人つく。同時に作品に関して報道し、世間から認知されるように後押しする。募集は来年1月からスタート、Netflixのクリエイター支援基金「Fund for Creative Equity」がサポートする。

ブランシェットは「私たちは多様化しないことで、クリエイティビティのチャンスを大量に失っている。どんな業界でも同質性は進歩と革新の死を意味する」と話している。ちなみにスミス博士の最新のレポートによると2007年から2022年の興行収入上位1,600作品のうち女性監督によるものは6%。さらにこれらの映画の登場人物のうち女性、少女、トランスジェンダー、ノンバイナリーの数は3分の1以下だという。ブランシェットの指摘する通り、数字で見るとまだまだ多様性が進んでいないことがよくわかる。彼女のプログラムがこの実態にどのような影響を及ぼしていくのか、注目が集まっている。