奈良ユースから初のトップ昇格内定。オフ・ザ・ボールでの動きに自信のMF川井大地は立ち振る舞いも磨く
[6.22 奈良県1部リーグ第8節 五條高 1-5 奈良ユース 奈良県フットボールセンターB] 【写真】お相手がJ1選手だったと話題に…元アイドルの女優が2ショットで結婚報告 2020年に設立したばかりの奈良クラブユースだが、近年の成長は著しい。16日に行なわれた日本クラブユースサッカー選手権(U-18)の関西地区予選ではC大阪U-18に勝利し、初の全国大会出場が決定。初参戦の奈良県1部リーグでも開幕から負けなしを続け、プリンスリーグ関西への昇格を見据えている。 今月8日には、MF川井大地(3年)の来季からのトップチーム昇格内定も発表。クラブ初のアカデミー出身Jリーガーとなる川井は奈良ユースが取り組む育成の象徴と言える選手だ。 「ボールを持つのが好き」と話す通り、判断良くパスを散らし、攻撃のリズムとチャンスを作る司令塔タイプの選手だが、本人が自信を覗かせるのはオフ・ザ・ボールでの動き。相手や味方の立ち位置を的確に見て、捕まらない場所でボールを引き出し、効果的にスペースに走りこんでいく。同時にボールを失ってからの守備意識も高い。5-1で大勝した五條高との試合は怪我から復帰したばかりとあり、後半途中からの出場となったが、随所で違いを感じさせるプレーを披露した。 これからの奈良を背負う選手として期待される川井は三重県出身。「元々はバルセロナが好きで試合を見まくっていた」という川井は、パリ・サンジェルマンや新潟が取り入れる「エコノメソッド」(スペイン式トレーニング)を学ぶため、小学生の頃からキャンプに参加していた。 中学に上がるタイミングでJリーグのアカデミーからも声がかかったが、エコノメソッドを全面導入する山梨県の「アメージングアカデミー」への加入を決意。当時のチームメイトだったMF大谷湊斗(3年)は昌平高へと進んだが、スペインサッカーに憧れる川井には高校サッカーや他のJクラブアカデミーに進むつもりはなかったという。小学生の頃から指導を受けてきたダリオ・ロドリゲス氏が監督を務め、エコノメソッドを採用する奈良ユースへの加入は自然な流れだった。 小学生の頃からトップチームと同じサッカースタイルに触れてきただけあって、奈良への適合も早かった。ユースチームへ加入直前だった中学3年時の冬には、トップチームの練習に初めて参加。高校2年生となった昨年は練習試合への出場も経験している。高校生活最後の年を迎えた今年は、プレシーズンから4月までトップチームに帯同し続けた。 一足早くプロ選手と触れ合ってきた経験は川井にとって大きく、「サッカー面以上に人間的な部分が学べた」と口にする。元々、コミュニケーションは苦手だったというが、「話していかないと相手にされない。周りを見て行動しないと輪に入れなくて、パスももらえない」と考え、積極的に話を聞きにいった。 多くの選手が優しく接してくれる中でも、「特に助けてもらった」(川井)というのが7歳上のMF森田凜。同じJリーグのアカデミー出身(徳島ユース)のMFから教えを乞うため、帯同した試合終わりのランニングをした際、自ら話を聞きに行った。教えてもらったのはピッチ外での立ち振る舞いだ。Jリーガーになったばかりの頃の森田は最後までロッカールームに残って片付けをする。ゴミに気付いたら掃除をする。そうした凡事徹底を繰り返すうちにチームメイトから認められ、試合に絡めるようになったという。 「ロッカールームに行ったことがなかったので、立ち振る舞いが最初は分からなかった。だから、森田凜選手が教えてくれたことに凄く感謝しています。ユースでも同じように心がけていたら、結果としても自分のプレーが良くなってきたので、これからも意識してやっていきたい」。 将来の夢はバルセロナでプレーすること。小学生の頃から憧れ、真似をしてきたアンドレス・イニエスタを超えたいと考えている。そのためには、まずは奈良での活躍は欠かせない。「試合に出られるように頑張って、みんなに愛される選手になりたい。また見たいと思われるような選手になりたい」。そう笑う川井はこれからも目標に向かって、ピッチ内外で成長を続けていく。 (取材・文 森田将義)