大一番で飛び出した戦略的ゴール。考案したのは無名だったスペイン人コーチ
文 田島 大 現代サッカーは総合力の勝負。今月10日に行われたプレミアリーグ28節のリバプールvsマンチェスター・シティは、まさにそんな戦いだった。 リバプールの日本代表MF遠藤航を含め、ピッチ上の全選手が世界最高峰のレベルでぶつかり合って1-1の名勝負を繰り広げたのだが、シティに貴重な勝ち点1をもたらしたのは、ピッチに立たない“裏方”だった。
無名コーチが編み出した必殺技
23分、CKを得たシティはMFケビン・デ・ブライネがニアポストにクロスを入れ、それをDFジョン・ストーンズが合わせて均衡を破った。ゴールを生み出したのは完璧なクロスを入れたデ・ブライネであり、ニアサイドをカバーしていたMFアレクシス・マカリスターを力ずくで押しのけてスペースを作ったDFナタン・アケであり、チャンスを仕留めたストーンズなのだが、ゴールを確認したペップ・グアルディオラ監督が拳を握ってから立ち上がって指をさしたのは、ベンチの方向だった。そこに座っていた人物こそ、優勝争いの大一番で必殺技を編み出したコーチのカルロス・ビセンスだ。 スペイン人指導者のビセンスは、シティに来るまで全くの無名だった。自ら履歴書を送って2017年にシティの下部組織でコーチ職に就くと、そこからU-18チームのアシスタント、そして同チームの監督を経て、3年前にトップチームのコーチまで上り詰めた。 2022年にはオランダのヘラクレス・アルメロに誘われて監督就任に合意するも、同クラブが降格の憂き目に遭ったこともありシティに残留。ペップの片腕の一人としてチームを指導しており、あの意表を突くセットプレーを選手たちに伝授したのだ。 「カルロス(ビセンス)が教えてくれた」と試合後にストーンズは振り返った。「(リバプールの守り方に)気づいて、昨日練習したのさ。それが実ってうれしいね。僕はこれが今季初ゴールだし、それをビッグゲームで決めることができて良かったよ」