2023年もっとも活躍したTikTokクリエイター・ケンティー健人が語る“バズの秘訣” 「最初の5秒がとても大事」
2023年12月14日、1年を通して活躍したTikTokクリエイターを表彰する『TikTok Creator Awards Japan 2023』が開催された。国内のTikTokクリエイターのなかでもっとも活躍したクリエイターである「Creator of the Year」を受賞したのは、料理クリエイターのケンティー健人/kenty(以下ケンティー)だ。 【写真】『TikTok Creator Awards Japan 2023』に登壇した際のケンティー健人 TikTokフォロワー数は500万人を超え(2024年1月7日現在)、日本を代表する料理系インフルエンサーとなったケンティー。今回は、TikTokを始めたきっかけや“バズる”ための秘訣、過去に投稿した動画を振り返りながら語ってもらった。 ・TikTokを始めた理由はまさかの“海外出張辞令” ーー「Creator of the Year」の受賞、おめでとうございます! ケンティー:ありがとうございます。正直、実感があまりないんです。今回はノミネートもされていなかったので、僕は応援する立場だと思っていました。受賞を知ったときは「えっ、なんで?」と戸惑いの気持ちでいっぱいでした(笑)。 ーー2023年はTikTokのWebCMにも出演されて、ケンティーさんはいまやTikTokを代表する存在だと感じています。 ケンティー:本当にありがたいです。CM撮影ではテレビプロデューサーの佐久間宣行さんと共演をさせていただいたのですが、オーラがあって落ち着いていて、とても素敵な人でした。また、現場は動画クリエイターとしてとても勉強になりましたね。僕はいつもひとりで撮影しているので、現場ならではの膨大な数のカメラやディスプレイに感動しました。 ーーそんな2023年大活躍のケンティーさんですが、そもそもなぜTikTokを始めようと思ったのでしょうか? ケンティー:最初は、会社員をしながら動画配信をしていたんです。しばらく働きながらTikTokを続けていたのですが、会社で海外出張の辞令を言い渡されました。そのタイミングで会社を退職し、クリエイターの道を選択しました。 ーーなかなか大胆な決断ですね。なぜクリエイターの道を選択したんですか? ケンティー:会社員は、1日8時間仕事をするじゃないですか。その時間をすべて動画制作に費やしたら、なにかしらの形になるのではないかと思ったんです。海外で仕事を始めてしまったら動画制作に身を入れることは難しいだろうなと思ったので、悩んだ結果クリエイターの道を選択しました。 ーーTikTokもさまざまなジャンルがありますが、ケンティーさんが「料理」をテーマに選んだ理由について教えてください。 ケンティー:実はTikTokを始めた当初、ダンス動画を何本か投稿していたんです。でもまったくバズらず……。そのときに、「投稿するジャンルはひとつに絞ったほうがいい」という動画を見たんです。ちょうど一人暮らしを始めて自炊をしていたので、試しに料理している様子を投稿してみました。そしたらダンス動画よりも少しだけ再生回数が増えたので、「テーマを料理に絞ってやってみよう!」と決断したんです。 ・バズった要因は“自撮り”? ごく普通の見た目が武器に ーー最初にバズった動画はなんでしょうか? ケンティー:2021年の10月6日に投稿した、「198円のおでんをチュウハイでキメる動画」です。内容は、おでんセットを鍋に入れて食べるというものです。このころはフォロワーが14万人ぐらいだったんですが、動画の再生数もまだ安定していませんでした。そんななか、この動画が海外の視聴者さんを中心に爆発的に再生されたんです。 ーー2024年1月7日時点で、約450万回再生もされているんですね。なぜこの動画は、ここまでバズったのでしょうか? ケンティー:“自撮り”を取り入れるようにしたんです。それまでは、料理をしている手元しか映していなかったんですけど、食材を投入したり食べたり飲んだりしている“自分”も写すようにしました。自撮りは、当時海外の方や料理クリエイターのバヤシさんくらいしか取り入れていなかったので、僕も挑戦してみたらバズったんです。 ーーなぜ自撮りをするとバズるのでしょうか? ケンティー:たとえば料理しか映していない動画を見たとして、視聴者からするとその料理に興味が湧かなかったらスルーしてしまいますよね。でも料理をつくっている人が出てくることによって興味を持つ対象が増えるので、たくさんの人が見てくれたのではないかと思いました。 食べたらどんなリアクションになるのか、表情からも動画を楽しむことができます。しかも僕はプロのシェフでもなければ、派手なインフルエンサーでもありません。ごく普通の一般人だからこそ、親近感を持ってくれたのではないでしょうか。 ・海外層を意識し「見るだけでわかる」動画づくりへシフト ーー「198円のおでんをチュウハイでキメる動画」で海外層にバズり、一気にフォロワーが増えたそうですね。 ケンティー:そうですね。そこから海外の視聴者層を意識するようになりました。たとえばテロップをつけなかったりなど、動画づくりも工夫するようになりました。 ーーなぜテロップをつけないのでしょうか? ケンティー:最初は、レシピを全部記載していたんです。でも海外の方も見てくださるようになってからは、できるだけ“見ただけでわかる”動画づくりを意識するようになったんです。基本的に見れば手順などはわかるような動画になっているので、必然的にテロップの必要性もなくなりました。 テキストを入れると文字を目で追ってしまうし、日本語や英語で記載してもほかの言語圏の方には結局伝わらないので、映像だけで完結する動画にしています。 ーー海外のターゲット層を、しっかりと意識されているんですね。 ケンティー:国籍関係なく動画を楽しめるのは、TikTokの魅力ですよね。たとえばこの「肉巻きおにぎり」の動画も、たくさんの海外の視聴者さんに見てもらうことができました。日本では割と定番のメニューだと思うのですが、海外の方にとっては少し珍しかったのではないかと思います。内容はとてもシンプルなんですけど、肉巻きおにぎりの目新しさが、バズったきっかけなのではないでしょうか。 また、僕の動画では調味料もできるだけ身近にあるものだけで完結するような料理にしています。塩、胡椒、コチュジャン、砂糖、酒など、ひと目でわかるようなものを使っています。 ーー徹底して、“見るだけでわかる”をコンセプトに動画を制作しているのですね。視聴者の方に、レシピや分量を聞かれたりはしないのでしょうか? ケンティー:聞かれたときは、コメント欄で返信をしています。 ーーそうなんですね。視聴者の方とは、主にコメント欄で交流をとっているのでしょうか? ケンティー:視聴者の方とは、コメント欄とTikTok LIVEで交流しています。視聴者の方のコメントから動画のアイデアが生まれるときもあるんですよ。 たとえば「残り汁で和風カレーうどんUdon」という動画があるんですけど、これは以前おでんの動画を投稿したときに、「おでんのあとは雑炊しましたか?」というコメントから生まれた動画なんです。これには僕も「なるほど……!」と感じました。 ・最初の5秒で動画を見る“理由づけ”をつくる ーーほかに、バズるために意識していることはありますか? ケンティー:あとは、動画が始まって“最初の5秒”がけっこう大事だと思っています。僕は料理動画を投稿していますが、最初にドーンと出てきた食材が、「このあとどうなっていくんだろう?」と視聴者の方に思わせるような構成にしています。 ーー最初の“掴み”の部分ですね。 ケンティー:いきなり調理シーンからスタートしても、その先の動画を見てもらい続けるのは難しいので、最初のインパクトで興味を引くのは大事です。動画を見てもらうための“理由づけ”がないと、最近は再生してもらえないなと感じています。理由がないと、その動画を見る必要性がなくなってしまうので。 ーーケンティーさんは、普段どのように動画を構成しているのでしょうか? ケンティー:最初は、まず自分がなにを食べたいかを考えます。そこから多くの人に見てもらうためにはどんな見せ方をしたらいいのか、アイデアを広げていくという感じですね。 ・「無理に毎日見てほしい気持ちはない」 視聴者の日常に溶け込む存在に ーー2023年はコラボ動画も投稿されていましたね。 ケンティー:普段は家で撮影しているのですが、コラボのときは相手の方のお店や家で撮影するので楽しかったですね。 ーー普段の撮影と違って、意識していることはありますか? ケンティー:相手の持ち味が活きるような動画にすることです。僕がそこまで尖った特徴があるタイプではないので、コラボのときは相手の方の特技を軸に動画をつくります。コラボをすることで僕自身の動画の幅も広がりましたし、自宅以外でも撮影はできるということを改めて実感しました。 ーー手軽に撮影できるのはTikTokならではの魅力ですよね。ケンティーさんは、どんなときに自身の動画を見てほしいと考えていますか? ケンティー:無理に毎日見てほしいとか、この時間に投稿するから見てほしいという気持ちはまったくないんです。時間が空いたときの暇つぶしとか、寝る前とか、そんなときに見ていただけたらと思います。なにか作業をしながら流したりとか、自然と日常に溶け込む存在になれたら嬉しいなと思います。 ーーありがとうございます。最後に、2023年12月20日に発売されたレシピ本『ケンティー健人の世にもおいしい一人飯』について教えてください。 ケンティー:最初は、自分なんかがレシピ本を出していいのかなという気持ちでいっぱいでした(笑)。でもせっかくなら僕の動画の雰囲気が投影されたものがいいなと思い、画像をたくさん使って「読まずに見る!」をコンセプトにつくらせていただきました。 QRコードが付いてるのでそこから僕のショート動画を見ることもできますし、調理の説明も堅苦しいイメージではなく、何となく見ていて楽しいなって感じていただける本になってます。料理って難しいものではなくて、自由で楽しいものなんだという想いが伝わればいいなと思っています。
はるまきもえ