四国で唯一の技術を持つ茅葺き職人・川上義範さん 梼原伝統の工法を若者世代へ【高知】
RKC高知放送
日本古来の建築技術「茅葺き屋根」の葺き替え作業が高知県梼原町で行われています。 手がけるのは四国で唯一の技術を持つ茅葺き職人の男性です。 茅葺き屋根の葺き替え作業が行われているのは梼原町の太郎川地区にある古民家です。 指揮をとっているのは地元の川上義範さん(77歳)。昔ながらの工法を受け継ぐ四国で唯一の茅葺き職人です。 作業は11月12日から行われていて、この日は仕上げに向けての作業の真っ最中。川上さんとともに町内から集まった人たちが専用の鋏を使って屋根の下から上へと剪定していったあと、「シャチ」と呼ばれる木製の道具を使ってトントンと押しながら形を整えていました。この地道な作業は屋根の見栄えを整えると同時に、雨水が内部に侵入して腐食を防ぐための大事な行程だそうです。 川上さんは半世紀近い職人生活で培った「目」で状態を見極め、細かな指示を出していきます。また、自らも鋏を握り手作業で作業を行っていました。 ■川上義範さん 「私にとって茅葺きというのは、我が子を育てるというような大げさなものじゃないけど、やっぱり自分の子どもに力を入れるような気持ちで接している。2年でも3年でも5年でも。例えば、今度傷んだ時には手入れしてやるよ、それをいつまでも人生じゃないですが、まぁ長生きをするような気持ちで、とにかくこの家を守ってくださいよというような気持ちで接している」 梼原町ではかつて茅葺き屋根の家が建ち並び、地域ぐるみで屋根の葺き替えを行うなど原風景の1つとして息づいていました。その後、高度経済成長による生活様式の変化などでその数は激減。現在は町内でわずか14軒ほどとなっています。 そんな中で伝統を残そうと活動を続けている川上さん。これまでに国や県などが指定する文化財の茅葺き屋根の修復や葺き替えを行うなど数多くの文化財の保護に携わり、今年11月に茅葺き職人としては高知県初の「現代の名工」に選ばれました。現在は今年春に兵庫県から移住してきた津村祥平さん(25歳)など次世代の若者たちへの技術の継承にも力を入れています。 ■津村祥平さん 「こっちが学ぶ意欲があればちゃんとそれに対して受け止めてくれて、自分の技術も独占する事なくみんなに本当に幅広く教えてくれて。教えてもらって実践した事がこうやって形になっていくっていうのはすごく嬉しい事です」 ■川上義範さん 「今年春入った子どもたちがこれだけの仕事ができるのは上等ですね。この津野山(地域)の自然の姿。これはもう他にもないというような事なので、これを本当にもう大切に守っていく。保存していく。というような形で頑張っていきたい」 12月中旬には現在の葺き替え作業を終える予定という川上さん。来年も全国各地を飛び回り、日本の原風景として残る茅葺き屋根を守り続けていきます。 来年7月には東京・国立科学博物館で川上さんが受け継いだ梼原伝統の茅葺き屋根が展示される予定です。