祖父が肺がんになり、実家から治療費を送るよう頼まれました。がんになったときの治療費を教えてください。
厚生労働省が発表した「全国がん登録 罹患数・率 報告 2019」を見ると、肺がんはがんのなかで男性で4番目、女性で3番目に多い罹患(りかん)数であることがわかります。生命保険などでもがんに対応した保険がありますが、すべての費用を賄えるわけではありません。 実際、肺がんになった場合、治療費はどの程度必要になるのでしょうか。本記事では、がんになったときのおよその治療費を解説します。
肺がんの治療費は高額療養費制度を利用して抑えられる
肺がんには「小細胞がん」と「非小細胞がん」の2種類があります。発生する位置は肺の入り口にある太い気管支「肺門部」、あるいは肺の気管支の末梢(まっしょう)から奥にかけての部分「肺野部」がほとんどです。 肺門部にある肺がんはエックス線で見つけにくいため、気管支鏡などで検査しなければなりません。一方、肺野部にできる腫瘍は、エックス線で発見しやすいです。 ◆肺がんの治療にかかる医療費の目安 肺がんの治療はどの程度進行しているか、手術が必要かなどによって異なります。薬物療法も進行度によって異なるため、こちらではあくまでも目安について説明します。 具体的には、外科手術で約158万円、放射線治療として予防的に行うもので約54万円、入院して行う場合で約86万円です。薬物療法は方法によって約5~75万円かかります。実際には、肺がんが対象となっている生命保険に加入していれば、保険を利用できるでしょう。 また、健康保険があれば自己負担しなければならないのは1~3割です。保険適用にならないものは先進医療を受けた際の医療費、入院時の食費や差額ベッド代、通院にかかる交通費などが挙げられます。 日本対がん協会の「がんによる生涯医療費の推計と社会的経済的負担に関する研究」によると、5年間でかかる肺がんの平均治療費は約374万円でした。1年当たり74万8000円(1ヶ月当たり6万2333円)であることがわかります。 ◆高額療養費制度を利用すれば負担額を軽減できる 1ヶ月間にかかる医療費(窓口で支払う分)の自己負担額が一定額以上になった場合、自己負担額を軽減するために利用できる制度が「高額療養費制度」です。ただ、自己負担額は収入や年齢によって異なります。 例えば、70歳以上で住民税非課税世帯の場合、個人の自己負担額の上限は8000円、世帯全体で1万5000~2万4600円です。前述した1ヶ月当たりの肺がんにかかる治療費を考慮すると、70歳以上の住民税非課税世帯であれば、高額療養費制度を利用して治療費の多くをカバーできると考えられます。