「被害者のためを思って犯行に及んだとは考え難い」ALS嘱託殺人 医師に懲役18年 判決で「憲法は『命断つため他者の援助求める権利』など保障していない」と指摘
難病・ALS患者への嘱託殺人などの罪に問われている医師の裁判で、京都地裁は懲役18年を言い渡しました。京都地裁は判決の中で「被告は被害者のために犯行に及んだものとは考え難い」などと指摘しました。 【画像を見る】亡くなった林優里さん
判決によりますと、医師の大久保愉一被告(45)は、2019年元医師の山本直樹被告(46)と共謀し、ALS患者の林優里さん(当時51)から依頼を受け、薬物を投与し殺害するなどしました。
大久保被告は「安楽死させられる」とSNSでメッセージ
大久保被告は死亡した林さんと面識はなくSNSで「安楽死させることができる」とメッセージを送っていたということです。 (林さんのものとみられるツイート) 「作業は簡単だろうからカリスマ医師じゃなくてもいいです」 (大久保被告とみられる人物の返信) 「追訴されないならお手伝いしたのですが」 (林さんのものと見られるツイート) 「うれしくて泣けてきました」
これまでの裁判で、大久保被告側は起訴内容を認めた上で、「林さんの願いを叶えるためで処罰するのは自己決定権を認める憲法に違反する」と無罪を主張する一方、検察側は「安楽死とはほど遠く、正当行為にあたるはずがない」としていて、弁護側・検察側の見解は真っ向から対立していました。
「憲法は『命を断つために他社の援助求める権利』保障していない」
5日の判決で、京都地裁は弁護側の憲法違反だという主張について「恐怖や苦痛に直面していても憲法は『命を断つために他者の援助を求める権利』などを保障していない」と指摘しました。 その上で、「被告は被害者の主治医ではなくALSの専門医でもない。SNS上でやりとりがあったにすぎず15分程度の面会で殺害に至った。社会的相当性は到底認められず、被害者のためを思って犯行に及んだものとは考え難い」と指摘し、山本被告の父親を殺害した罪も含め大久保被告に懲役18年を言い渡しました。