村上春樹「気の毒なフォスターさんの名曲『夢見る人(Beautiful Dreamer)』を聴いてください」
作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。4月28日(日)の放送は「村上RADIO~村上の世間話4~」をオンエア。好評の「村上の世間話」シリーズ第4弾は、クスッと笑える“世間話”を、村上DJが選曲したグッドミュージックとともにお届けしました。。 この記事では、スティーブン・フォスターのエピソードを語ったパートを紹介します。
◆The Jazz Crusaders「Fools Rush In (featuring Bobby Caldwell)」
ジャズ・クルセイダーズといっても、これはクルセイダーズが解散したあと、1995年に再編成されたバンドで、歌はボビー・コールドウェル、曲は「フールズ・ラッシュ・イン」です。 トロンボーンのウェイン・ヘンダーソンと、テナーサックスのウィルトン・フェルダーと、ギターのラリー・カールトンが中心になったバンドです。ジョー・サンプルとスティックス・フーパーは参加していません。でもヘンダーソンとフェルダーのフロントラインの響きは、相変わらずキリッとかっこいいですね。
◆Stephen Foster, Jan Degaetani, Leslie Guinn「Beautiful Dreamer」
ノンサッチ・レコードは学術的なレコードを好んで出す、いわゆる「意識高い」系のレコード会社ですが、ここからスティーブン・フォスターの歌曲全集が出ていまして、これは当時の楽譜通り、当時の楽器を使い、当時の歌唱方法で歌うという、かなり意欲的な企画でした。そこから「夢見る人」をかけます。バリトンはレスリー・グイン。この曲は1864年にフォスターが亡くなって、その2ヵ月あとに発表されました。亡くなったとき、フォスターの持ち金は僅か38セントの小銭に過ぎなかったそうです。 フォスターの時代は基本的に印税というものが存在しなくて、著作権みたいなものもなく、楽譜業者が1曲1曲はした金で買い取るというシステムでした。第一、当時はプロの「作曲家」という職業自体が存在しませんでした。みんな他にメインの職業を持っていて、アマチュアとして作曲をしていたんです。だからフォスターは生涯を通じて約200曲の歌曲を書いたのですが、ほとんど収入にならなかったんですね。 気の毒なフォスターさんの作った名曲「夢見る人(Beautiful Dreamer)」を聴いてください。