広島電鉄のICカード簡易型読み取り機 使い勝手は? 3月導入 均一運賃エリア外では乗務員とやりとり必要
広島電鉄(広島市中区)が来年3月に導入する交通系ICカードの読み取り機を巡り、「使い勝手が悪くなるのでは」と懸念の声が出ている。簡易型のため、均一運賃エリアを除き、ICOCA(イコカ)などを使う客は乗車した停留所を乗務員に伝える必要が生じるからだ。広電は「利便性をできるだけ損なわないようにする」と理解を求める。簡易型の特徴や導入の経緯、利用者の意見を整理する。 【図解】交通系ICカード簡易型読み取り機のイメージ ■簡易型読み取り機とは JR西日本のイコカなど交通系ICカードを使う客は降りる際、乗車したバス停や電停を口頭か整理券で乗務員に伝え、読み取り機にカードをタッチする。その際、乗務員が読み取り機を操作し、カードの残高から運賃を引き去る。降り口は乗務員がいる扉に限られる。乗り口に読み取り機はない。車内ではチャージ(入金)はできない。広電は、芸陽バス(東広島市)備北交通(庄原市)エイチ・ディー西広島(西区)のグループ3社を含むバスと路面電車で導入する。 簡易型はJR西グループが開発し、均一運賃で運行する小規模事業者を想定する。均一運賃の区間は乗務員とやりとりする必要はない。このため、広電の路面電車や広島市中心部の路線バスの均一運賃エリアは、カードをタッチするだけで降車できる。それ以外の路線バスや、広電宮島線を利用する客は乗務員とやりとりすることになる。 交通系ICカードの定期券は使えない。 ■導入の理由 広電は、カード型IC乗車券PASPY(パスピー)に代わる新乗車券システム「モビリーデイズ」を9月に始める。乗客は、スマートフォンに表示したQRコードか、パスピーに代わるICカードで運賃を支払う。 一方、新システムでは交通系ICカードが使えない。広電の路面電車やバスの利用者のうち交通系ICカードを使う人は約2割。広電はこうした人に配慮し、簡易型読み取り機の導入を決めた。 簡易型にした理由の一つは、チャージなどが可能なフルスペック型の方が導入コストがかさむためだ。広電の大上明紀新乗車券システム推進部長は「広電はモビリーデイズの利用をお願いしている。簡易型はイコカなどを使う既存客の利便性のため」と説明する。 ■利用客の声 「使い勝手が悪い」。スマートフォンなどで使えるJR東日本のモバイルSuica(スイカ)で広電グループのバスに郊外まで乗る女性(47)=東区=は疑問を感じる。「乗務員とのやりとりが面倒。モバイル端末をかざすだけの今の読み取り機の方がいい」と話す。 広島バス(中区)広島交通(西区)中国ジェイアールバス(同)も交通系ICカードの読み取り機を導入するが、パスピーと同じように使えるフルスペック型を予定する。アストラムラインを運行する広島高速交通(安佐南区)は来年3月末までにパスピーの運用を終え、交通系ICカードに切り替える。 観光客や出張者への影響も見込まれる。広電宮島口(廿日市市)から原爆ドーム前(中区)までスイカで乗った札幌市の男子大学生(22)は「手間もあるが、乗務員に声をかけるという仕組みが分かっていなければ戸惑う。観光客にとっては使いにくい」と指摘する。 広電の大上部長は「スムーズな乗降や利便性には課題がある。他のバス会社と読み取り機の使い方が違うので乗客が混乱するかもしれない」と受け止め、「広電のホームページなどで簡易型読み取り機の使い方を周知したい」と説明している。(加田智之)
中国新聞社