仲里依紗の代表作は“自分自身” 『おむすび』橋本環奈との姉妹役は朝ドラ史に刻まれる予感
2024年度後期NHK連続テレビ小説『おむすび』に仲里依紗が出演することが発表された。役柄は主人公・結(橋本環奈)の姉であり、地元・福岡で“伝説のギャル”として知られた、米田歩。このプロフィールだけでも早くも期待が高まる。 【写真】夫・中尾明慶と夫婦役で共演のドラマ『Living』 仲の名が世に知られたのは、2006年公開の細田守監督作『時をかける少女』。主人公・真琴が放つ青春の煌めきに多くの人が虜になった。その後、2010年には谷口正晃監督による実写版『時をかける少女』では芳山あかり役として主演を仲が務めていることからも(しかも共演した中尾明慶と結婚)、運命的な作品だったことがわかる。 その後も順調にキャリアを重ねていった仲が朝ドラに出演するのは『おむすび』が2作目。1作目となった『エール』では、野間口徹との夫婦役で喫茶店の店主を務め、主人公たちの憩いの場を支えていた。出演シーンは決して多くなかったものの、過去の男について語りだす“劇場”を繰り広げ、作品内の空気を別のものにしていた。満を持してのメインキャラクターとなる『おむすび』では、どんな役割を果たしてくれるのか。ドラマ評論家の成馬零一氏は、「平成ギャル役はぴったり」とその期待を語る。 「仲さんがご自身で配信されているYouTubeチャンネルを見ていると、話し方や立ち居振る舞いが“ギャル”なんです。コギャルと浜崎あゆみさんに憧れていたとも語っていて、大いに納得しました。決して嫌味にならない過激さというか、カラッとした逸脱感が平成ギャルにはあったと思うんです。仲さんはまさにそれを体現している方。制作統括の宇佐川隆史さんが『仲里依紗さん以外には考えられませんでした』とコメントしているとおり、“伝説のギャル”役はこれまでにないハマり役になると思います」 成馬氏は仲の俳優としての魅力について、「いい意味で代表作がないところ」と続ける。 「直近の出演作を振り返っても、『離婚しようよ』(Netflix)、『大奥』(NHK総合)、『今際の国のアリス』(Netflix)など、どれも仲さんにしかできない役柄で素晴らしい芝居をしているのですが、彼女にとっての“代表作”という感じが不思議としないんです。キャリアを振り返ったときに、『時をかける少女』や『ハチワンダイバー』(フジテレビ系)、『ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲-』 『土竜の唄 潜入捜査官REIJI』なども印象深いと思うのですが、そのどの出演作よりも“素”の仲さんが強い。それはYouTubeなどで私生活を発信されているからなのかもしれないのですが、私生活の方がある意味“クレイジー”で、演じているときのほうが“普通”になるというか。だからこそ、どんな役柄にも染まることができるのだと思います」 現在放送中の宮藤官九郎脚本のドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)にも仲はシングルマザーの大島渚役で出演中。第1話でも見事な“啖呵”があったように、「“強い女性”を演じさせたら仲さんの右に出る人はいないのではないか」と成馬氏は分析する。 「『不適切にもほどがある!』『大奥』『離婚しようよ』と、強い女性を演じることが続いています。でも、ただ、“強い”女性を演じているのではなくて、そこに切なさや哀しみが仲さんの芝居にはある。だから、強い言葉を放っているときも、“うるさい”といった感じが不思議としない。ともすれば、嫌われるような人物にもなっておかしくないキャラクターも、仲さんが演じるとそういったものがないというか。それは仲さんの根底にある“ギャル”マインドが大きいのではないかと思います。どこかカラッとしている、ジメッとしていない強さがある。それは『おむすび』で主演を務める橋本環奈さんにも共通している要素といえるかもしれません。橋本さんは映画『セーラー服と機関銃』で主演を務めていて、仲さんは『時をかける少女』。一時代を築いた角川映画のリメイク作でヒロインを務めた2人が姉妹役に、しかも舞台は平成という点になんとも言えない縁を感じますし、非常におもしろいなと思います」 誰もがピッタリと感じた仲里依紗の“伝説のギャル”役。橋本環奈と朝ドラ史に刻まれる姉妹になりそうだ。
石井達也