<日本一を目指して・仙台育英>支える仲間たち 吹奏楽部36人 演奏で選手に力を 応援曲や得点テーマ練習 /宮城
第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に出場する仙台育英では、吹奏楽部も試合中の応援で選手に大きな力を授けている。部員たちはスタンドからグラウンドの選手に向けて「育英サウンド」を響かせたいと意気込んでいる。 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら 「甲子園に出ると、みんなの表情が変わる」。部員たちが楽器を手に満面の笑みでアルプススタンドに立つ写真を見ながら、顧問の大内泉教諭(64)が目を細めた。「想像以上の集中力で演奏してくれた。こんな笑顔見たことないよ。普段の練習でも見せてくれればいいのに」と笑う。 吹奏楽部は1、2年生合わせて36人。多賀城校舎(多賀城市)で週5、6日練習している。現在は5月24日に市民会館で開催予定の定期演奏会と、夏の全日本吹奏楽コンクールに向けた曲目に取り組んでいる。今年の演奏会では「甲子園応援メドレー」として「サウスポー」「モンキーターン」などの応援曲を演奏する予定だ。 「中学からずっと憧れだった」と語るのは部長の2年、関内里菜さん(17)。甲子園での演奏をテレビで見て、吹奏楽部を目指したという。入学してから2018年夏、19年夏の大会に駆け付けた。猛暑の中でのスタンド応援も「ここに立てるのがうれしい」と目を輝かせながら振り返る。 甲子園では正確さやきれいな音が求められるコンクールとは違った演奏をするという。トロンボーン奏者の関内さんは「音を遠くに飛ばす必要があり、多少ずれた音でも選手に向けて響かせなければいけない」と話す。そのためには体力が必要で、昨夏は現地入り前に校舎の周囲で走り込みをした。 副部長の2年、井上瑞香さん(17)は「甲子園応援係」として曲目づくりに取り組む。スタメン9人の応援曲や得点が入った時のテーマなど、合わせて20曲ほどを用意する。 定番の応援曲だけでなく、昨夏に演奏して好評だった「サイレントマジョリティー」などポップス曲も取り入れた。吹奏楽の楽譜がない曲をアレンジする時はインターネットの音源を参考にしながら、携帯電話のアプリで楽譜を作成する。「徹夜で2、3日かけて楽譜をつくる」という大変な作業だ。 硬式野球部やチアリーディング部とは試合前に合同で応援練習。井上さんは「炎天下で練習していると『暑くないですか?』と気にかけてくれた」と、野球部員がみせた気配りに感嘆したという。 吹奏楽部はここ数年のコンクールでは県大会止まりだが、今年は東北大会出場を目指す。全国大会常連の野球部に、関内さんは「一つの思いにかける力がすごい。甲子園で勇気をもらった」と話す。彼らが輝く舞台に向けて「パワーアップした演奏を選手一人一人に届けたい」と力を込める。【滝沢一誠】