こんなに安くていいの?スズキ・フロンクスが「日本一お買い得なSUV」と言い切れるワケ
今回フェルさんが試乗したのは、スズキが2024年10月に発売したコンパクトSUV「フロンクス」。2駆が254万1000円、4駆でも273万9000円と激安価格でも話題のフロンクスは、実はインド生まれ。インド・グジャラートの工場で生産したものを、日本に輸入する形で販売しているのです。インド生まれのコンパクトSUV、果たしてその乗り心地はいかに?(コラムニスト フェルディナント・ヤマグチ) 試乗記本編は2ページ目から始まります。この連載は写真がとても多いため、ダイヤモンド・オンラインで元記事を読むことをお勧めします ● 年末は宮崎で、年始は東京で過ごしました みなさまごきげんよう。 フェルディナント・ヤマグチでございます。 今週も明るく楽しくヨタ話からまいりましょう。 本稿が、年が明けてから入稿する最初のお話となります。 改めてあけましておめでとうございます。 本年も当「走りながら考える」をご贔屓いただきますよう、伏してお願い申し上げます。 少し長めの冬休み、年末は31日まで宮崎で、年明けは東京で過ごしました。 宮崎の波乗り仲間に聞くと、「ここ1カ月近く丸坊主だった」(海に出られない状態だった)とのこと。少しでも波に乗れたことに感謝しなくてはいけません。 東京に戻り、元日は調布飛行場で自動車評論家の河口まなぶ氏と、複数の飲食店を経営する柏崎龍進氏と恒例の正月ランを10キロほど。実は今年、久しぶりに東京マラソンに出るんです。しっかり走り込んでおかなければ……。 3日は伊豆の林道へ、エキスパートのみなさまとツーリングへ行ってきました。みなさん上手い!速い! 林道を快適に飛ばしていると、まさかの崖崩れ。ルート変更を余儀なくされ、帰りが少し遅くなりましたが、事故もなく楽しい一日を過ごすことができました。みなさまありがとうございました。 ということで本編へとまいりましょう。今回お届けするのは、スズキが販売するインド製小型SUV、フロンクスの試乗記であります。
● スズキはなぜ、インドで高いシェアを持っているのか? 今回はスズキが発売するインド製小型SUV、フロンクスの試乗記……なのだが、フロンクスの話に入る前に、スズキとインドの関わりについて少々。 スズキがインドで大きなシェアを持っているのはご存じの通り。1980年代初頭。インド政府は自国の自動車産業を発展させるため、海外の自動車メーカーと提携して安価で良質な国産車の生産をもくろんでいた。当時のインドはいわゆる「発展途上国」で、大衆向けの「安く」「燃費が良い」クルマが必要とされていたのである。しかし当時のインドには満足な自動車メーカーが存在しなかった。 そこでインド政府は複数の海外自動車メーカーに提携を打診し始めるのだが、電力供給(よく停電した)や道路網(未舗装で穴だらけ)等のインフラの不安や、インド市場の不確実性から、どこの会社からも色よい返事を引き出すことができなかった。そりゃそうでしょう。なにしろ1980年代のインドである。インフラが未整備の上に政情はガタガタで、経済も停滞気味。更には宗教間の対立や分離主義運動など、外国企業が進出するには、あまりにもリスクが高い状況だったのだから。 ● 昨年末に亡くなった、鈴木修会長の英断 読者諸兄は覚えておいでかどうか。1984年にはインド軍が黄金寺院に立てこもるシーク教過激派を襲撃して、500人以上が死亡した「黄金寺院事件」が起きたりもした。かように物騒な国から提携を提案されても、そりゃ腰が引けますわな。各自動車メーカーが二の足を踏む中、ただ一人手を挙げたのが、昨年のクリスマスに天に召された鈴木修氏である。 氏はインド市場の将来性にいち早く目を付け、「インドには自動車産業のインフラが整っていない。ならば自分たちがゼロからつくり上げればいい」とインド政府との提携に乗り出したのである。勇猛である。果敢ではないか。 スズキがインドで最初に生産したのは、燃費が良く価格もお手頃な「マルチ800」である。日本で既に発売されていたアルトをベースに、旧軽規格の550ccエンジンを796ccの直列3気筒エンジンに換装し、インドのガタガタ道に合わせてサスペンションや車体を強化し、インド市場が望む「安く」「燃費が良い」クルマをつくり上げた。 マルチ800は売れに売れ、都市部や農村部を問わず、広くインド人に受け入れられ、「インド初の国民車」として社会に大きな影響を与えたのである。 鈴木修氏のたぐいまれなる先見性、リスクを恐れぬチャレンジングな姿勢が成功の鍵と言えよう。本当の名経営者だった。合掌。