Living in Sapporo《イギリス人》ザムブーニさん後編 流木もったいない
【北海道・札幌】200万人近い人口を抱える北海道の道庁所在地・札幌。「さっぽろ雪まつり」を代表とする世界規模のイベントも開催され、多くの観光客が訪れる街だ。そこで、在札幌の外国人に「札幌の魅力」を聴く「Living in Sapporo」の不定期連載をスタート。第5回後編は、流木を利用した木工雑貨を製作する工芸家のイギリス人、スティーブ・ザムブーニさんに札幌の可能性を伺った。 (インタビュー・構成/橋場了吾)
大量の流木を見て木工の道に
2002(平成14)年、エコ・環境に関する仕事のボランティアとして2回目の来日をしました。選択肢は北海道と九州の2か所だったのですが、北海道を選びました。なぜ北海道を選んだのかは…忘れてしまいました(笑)。でも、この北海道・釧路にやって来たことで、のちの人生が変わります。 ひとつは通訳としてお世話をしてくれた女性と結婚したこと、もうひとつは流木に出会ったことです。出身地のイギリス以外にも多くの国を見てきましたが、日本ほど流木がある地域はありません。率直に「もったいない!」と思いました。その時に、小さい頃から木工が好きだったことを思い出して、流木を使ったアートやクラフトを作り出そうと思ったんです。 ボランティアは2週間の予定だったので、一度イギリスに戻ってから、また釧路にやって来て本格的に流木を使ったアート・家具作りを始めて、展示会での販売などもスタートしました。 釧路では奥さんの実家に居候していたのですが、その時に日本語をたっぷりヒアリングできました。今では、会話に関しては苦労しないレベルになりましたね。日本食もすぐ好きになりました。イギリスに帰ると、寿司やそばが恋しくなるんです。海外の食べ物は味が濃いので、さっぱりしたシンプルな和食が食べたくなりますね。
もちろん工房も全部手作り
釧路には2年間いて、その後札幌へ引っ越してきました。もう10年以上札幌に住んでいて、今の場所(札幌市南区石山)が3か所目の工房になります。工房の名前は「buni deco」。私の小さい頃のニックネーム「buni」に「deco」(デコレーション)をくっつけました。 この工房は、隣にあるパン工場の寮を改造したものです。もちろん、全部私の手作りです。まだ全部は完成していないのですが、時間に余裕ができたらきれいにしたいですね。 札幌に住んでいて思うのは、まず安全なこと。今の工房は入口がガラス張りですが、イギリスだとすぐに壊されてしまうので、このような工房はできないんです。それと、歴史が比較的浅いので可能性が無限大であること。イギリスのように、歴史のある場所から来ると、新しいことがいくらでも出来るのではと感じています。もっと自由なアイディアを活用すれば、もっともっと素敵な街づくりができると思います。 あと、日本でびっくりしたのは「家の解体」です。イギリスでは歴史的建造物をリノベーションしながら活用するのですが、日本ではすぐに壊してしまう…これも流木同様「もったいない!」と思いました。北海道は、環境・エコのボランティアをしていた経験から、資源をもっと有効利用できる場所だと思うので、流木を使った家具やクラフトを製作することで実践していきたいと思っています。