座礁、転覆、浸水、死亡…県内の台風海難10年間で77隻 「想定外」の勢力多い昨今、安否分ける早目の対応 大型船は安全海域へ、小型船は陸揚げ固定を…シーズン迎え10管が警戒呼びかけ
台風シーズンが本格化する中、第10管区海上保安本部は船舶所有者に対し「台風が近づく前に、船を安全な海域へ移したり、陸に揚げたりして万全な対策を」と呼びかけている。県内では2002年に志布志湾で貨物船が座礁し4人が死亡、15年には32隻の漁船などが転覆や浸水被害に遭っており、警戒が必要だ。 【写真】2015年8月の台風15号で転覆した船(第10管区海上保安本部提供)
鹿児島湾は急に深くなるため、いかりを下ろして停泊するのには向かない。港内の船舶交通の安全を図る港則法に基づいた勧告が出ると、ENEOS喜入基地=鹿児島市喜入中名町=周辺の海域から全ての船舶は避難を求められる(適用除外あり)。志布志湾も同様で、200トン以上の船は湾外へ避難する必要がある。 10管交通部の富樫広太郎航行安全課長は「とにかく早めに動くことが大事」と訴える。「大型船は安全な海域へ避難する。小型船は陸に揚げてロープなどで固定する。難しければ隣同士の船を寄せ合って係留を強化すると有効」と助言する。作業中はライフジャケットの着用も欠かせない。 02年の台風9号では、志布志湾に停泊していたパナマ船籍の貨物船が波風の影響を受け、下ろしていたいかりが動き、水深約10メートルの海底に座礁した。海岸近くまで打ち寄せられた後、船体が中央部から折れ、乗組員19人中4人が死亡した。翌年6月17日の海難審判では「台風の影響が少ない海域へ避難しなかったのは判断ミス」と裁決された。
15年は台風15号が「非常に強い」勢力を維持しながら県本土に接近。いちき串木野市や南さつま市の漁港などで25隻が転覆し、7隻が浸水した。当時対応した鹿児島海上保安部の橋川秋彦次長は、当時の教訓が今の対策につながっているという。「当事者からは予想以上の勢力だったとの声が多かった。今まで大丈夫だったからと油断せず、最悪を想定して最良の対策を取ってほしい」と話す。 10管によると、県内は23年までの10年間に77隻が台風海難に遭っている。
南日本新聞 | 鹿児島