「庶民の焼き鳥が “貴族の焼き鳥” に」鳥貴族「台湾1号店」なぜか高級百貨店に出店で人人人…光速で出てくるビールには大感激
焼き鳥チェーンの「鳥貴族」が、9月20日、台湾に初の海外店となる1号店をグランドオープンした。出店したのは、台北市の中心部にある百貨店「新光三越 台北南西店」。台北駅から地下鉄で1分の中山エリアにあり、コスメやアパレルショップが立ち並ぶ台北有数の商業地区だ。 【写真あり】人でごった返している鳥貴族の「新光三越 台北南西店」 開業当日は、グループ代表取締役社長・大倉忠司氏も現地に駆けつけるなど、力を入れた台湾1号店のプレオープンに、本誌記者もお邪魔した。 「中山エリアには居酒屋やバー、日本食レストランが集まる “林森北路” という通りがあり、てっきりそこに開店するのかと思っていたら、高級百貨店の三越と聞いて意外でした」 こう語るのは、今回の取材に同行してくれた台湾在住の料理研究家・小河知惠子氏。たしかに、意外に感じる立地である。 おまけに、三越でも大衆的な飲食店が多く入るフードコートかと思いきや、ラルフローレンやモンブランなど名だたる名門ブランドが並ぶ5階の紳士服売り場の一画なのだ。 試験営業では14時開店だったが、12時55分に着くと6人ほどが並んでいた。まだまだ混む雰囲気ではなかったため、いったん離れて14時半に戻ると、すでに30組以上が前に並んでいるではないか。QRコード予約で行列は回避できるはずだが、やはり注目度が高いのか、人だかりがすごい。 並んでる人たちの年齢層はやや高め。グループだけでなく、30~60代くらいの一人客も多いように見受けられる。日本企業の駐在員もちらほら並んでいるようだ。待っている間、小河氏が何人かの台湾人に話を聞いてくれた。 「『日本の味を求めてきた』『日本で食べておいしかったのでまた食べたくて』という台湾の方が多いようですね。5日間のプレオープン中にリピートしている方もいて、『安くて美味しいし、夜市の焼き鳥よりずっといい』と話していました。 台湾人はお酒を飲まない人が多いので、居酒屋というより、レストラン感覚で食べに来ている人が多い印象です。 ちなみに、日本の大衆チェーンが高級百貨店に出店したのは台湾人も不思議なようで、『日本の “庶民の焼き鳥” が台湾に来て、店名どおりの “貴族の焼き鳥” になったね』なんて軽口を叩く人もいました」(小河氏・以下同) 列に並ぶこと30分。ようやく入店できた。 シックで洗練された雰囲気の店内は快適で、2人席でも4人座れそうなほどゆったりしている(席数は80~100席)。メニューの冊子はなく、タブレット注文のみ。席は90分制で、60分経つとオーダーストップするシステムだ。 日本の店舗と同じく、串焼きだけでなくサイドメニュー、各種ドリンクまで全100品と、豊富なメニューが揃っている。台湾オリジナルメニューはいまのところないようだ。 スタッフに聞いた一番人気の「もも貴族焼き(タレ)」と「とり釜飯」、ビールなど何品か頼んでみたが、日本の味と遜色なく、とても美味しい。 「台湾の焼き鳥風の串焼きをよく食べる身としては、やはり日本の焼き鳥は美味しく感じます。薄味好きの台湾人には、少ししょっぱいかもしれません。 あと、気に入ったのが、ビールが出てくるのが早いこと。台湾ではビールの泡にこだわりがないのか、注いでからしばらくたった “泡なし” ビールを持ってくるところも多いんです。それに比べると、台湾鳥貴族のビールは、光の速さで出てくる印象です」 ちなみに気になる価格だが、全品100元(約442円)均一と、日本の税込み370円(約82元)均一より若干高め。 「それでも、台湾のほかの居酒屋と比べると、かなりコスパがいいですよ。 鳥貴族は2串100元の均一価格で、飲み物も同じく100元。日本食レストランが多い地区なので、周囲に焼鳥店もありますが、相場としてはだいたい1串60元くらいから。1串50元の鳥貴族のほうが安いし、特にプレミアムモルツが100元で飲めるのは、ほかより断然安い。 コンビニでも生プレモルが飲めますが、300mlで99元。鳥貴族のグラスはたぶん360mlで、コンビニ価格より安いなんて素晴らしいコスパです」 手が空いたスタッフに話を聞くと、焼き場のシェフは全員大阪から来ている日本人とのこと。ホールスタッフはほぼ台湾人だが、日本語が少し話せる人も。お会計のレジで日本語を使ってくれたので、「日本語上手ですね」と言うと、「褒めても何も出ないよ~(笑)」と冗談交じりに返されるなど、接客態度にも大いに好感を抱いた。 「もともと台湾では日本食の人気が高く、歴史的背景からも浸透しているので、食べ慣れない異国料理という感覚ではないんです。台湾人経営の日本食チェーンも多く、レベルもなかなか高い。 さらに、スーパーでも簡単に地鶏が購入できて、価格もそこまで高くないので、ブロイラーとの食感の違いなどを理解している人は多いですね。 鳥貴族はブロイラーですが、飼料の栄養配合など農場環境の全プロセスを管理しているためか、臭みなどはまったく感じませんでした。 調理法によってオスかメスかを選ぶ人もいるくらい、台湾人は鶏肉にこだわる傾向があり、ごまかしが利かない。台湾で鳥貴族が定着するには、このまま日本のクオリティを保ち続ける必要がありそうです」 9月28日には韓国ソウルで韓国1号店のオープンを控え、海外進出攻勢を強める鳥貴族。日本が誇る “トリキ” の味を、ぜひ世界に広めてほしい!