<ラグビー>炎天下が味方したサンウルブズの大金星と残した課題
東京・秩父宮ラグビー場は炎天下。登録メンバーにニュージーランド代表を7名揃えるブルーズは、ミスを連発する。かたや日本のサンウルブズは、時間を追うごとに平常運転を貫く。チーム戦術に倣って球を保持し、立ち遅れの目立つ防御の隙間をえぐる。要所でキックも放つ。 2点差を追う後半18分には、敵陣ゴール前右でのモールへポジションを問わず頭を突っ込む。ブルーズが無用な妨害を犯し、サンウルブズはペナルティートライ(その反則がなければトライが決まっていたと判定されてのトライ)を決める。ここで26-21と勝ち越してからは、4度も追加点を挙げた。
7月15日。2月から始まった国際リーグのスーパーラグビーは最終節を迎え、サンウルブズが48―21で勝利。最下位を脱出した。ニュージーランド勢からの初白星を、チーム史上初のシーズン2勝目とした。 天の配剤があった。主催団体であるサンザーは開幕前、各試合のキックオフ時間を重ならないように配列。多額の放映権料を支払う海外放送局の意向もあり、サンウルブズのラストゲームは日本時間15日の日中か夜間に設定されることとなった。ホームのサンウルブズがキックオフ時間を決める権限は、その前提のもとに与えられた。 秩父宮の夜間照明施設はスーパーラグビーの開催基準に満たず、他会場開催はサッカーの試合と重なった影響などで実現されなかった。その結果、試合開始は午後12時5分となり、その時点での気温は31度を超え、真冬の南半球からやってきたブルーズは、東アジアの太陽と熱風に苦しんだ。 負けたフッカーのジェームズ・パーソンズ ゲームキャプテンは、「言い訳はできない」。試合後にはサンウルブズのシーズン総括を兼ねた記者会見が開かれたが、大喜びのフィロ・ティアティア ヘッドコーチは報道陣にこう発した。 「もしできれば、今日のこと(2勝目)に特化して質問いただければ大変嬉しく思います」 この国のラグビー界は、2015年のワールドカップイングランド大会で歴史的3勝を挙げた。さらに2019年には、自国大会の開催を控えている。 大目標を見据え、今季のサンウルブズは日本代表との連携をより強化。両軍は、昨秋着任したジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチの唱える戦術、コーチ陣、選手の大半を共有することとなった。サンウルブズの代表強化機関としての装置は、前年度以上に磨かれた。 日本代表と兼任する田邉淳アタックコーチは、試合結果とは別な収穫を明かす。 「(6月の日本代表ツアー前に)セレクションをする上で、どの選手にどんなフィジカル、マインドセットがあるのかを見極められた」 もちろん、厳しいレビューも不可欠である。注視すべきは、選手の日程管理だ。 夏から冬にかけ国内のトップリーグ、その直後から次の夏まではスーパーラグビーがある過密日程下、日本代表のジョセフは選手の「リコンディショニングプラン」を立案。出場過多が懸念されるサンウルブズの主力組に、代わるがわる休息を与えた。 そのためサンウルブズは、出場メンバーの顔ぶれを毎回変えなくてはならなかった。ゲームプランを立てる田邉アタックコーチは、実情をこう見ていた。 「(試合ごとに)まったく新しいことをしたわけではないですし、選手の(戦術の)飲み込みは早かった。ただ、長く離れた選手に試合感覚がないこともあったのは事実です。去年からサンウルブズにいた選手と今年から入った選手にギャップもあった。それが表れたのは、遠征の初戦(4月のニュージーランド遠征、7月の南アフリカ遠征での大敗)。その次の試合から、どんどんよくなっていくのですが」 日程管理と関連した問題は、選手の筋持久力の抜本的な強化だ。