【第33回埼玉政財界人チャリティ歌謡祭】本番3週前に急逝…バンドマスター・岡宏さん、メンバーが明かす「本当に憎めないキャラ」
ボロクソに言われた後にくる褒め言葉
改めて、岡さんはどんな人だったのか。大堀氏は「段取りの仕方も悪いし、棒の振り方もおかしいから、いつもこっちがとばっちりを受けて、決して信用できる指揮者ではなかったです(笑)。でも、いないと寂しいですね。すごく寂しいです」、相澤氏は「リハでは“ちゃんとやれよ”っていつもブツブツ小言を言うんですけど、次の日は“お疲れ様~”ってケロッとしてる。そういうさっぱりしたところがありましたね」と振り返る。 岡さんにかけられた忘れられない言葉を聞いてみると、一見乱暴な言い回しでありながら、情に厚い人柄が浮かび上がってきた。 「ある現場で、僕がソプラノサックスに持ち替えて吹いたら、真正面にいた岡さんにその音が直撃したんです。そしたら、休憩時間に控え室で“大堀のソプラノ、チャルメラみたいだよな!”って言うんで、もう頭にきて(笑)。その日の演奏が終わるまで我慢して“あんなこと言われたら、普通帰りますよ!”って言ったら、帰りの車で“さっきは言いすぎた。ごめんね”ってメッセージが来ました(笑)」(大堀氏) 「“小学生みたいだな”とかいつもボロクソに言われるんですけど、ある時にCDを作って、僕がアドリブソロをやったら“なんかスウィングしてるな”って言ってくれて。ボロクソに言われた後の褒め言葉は、やっぱり覚えてますよね(笑)」(相澤氏) 語り口調は厳しく、「思ったことを全部言う人」(大堀氏)だったものの、「本当に憎めないキャラなんです」(相澤氏)という。 ■「お客さんがいるから、俺たちの音楽は成り立ってるんだ」 そんな岡さんに立ち向かったメンバーもいたそうで、「昔、あるメンバーが岡さんに“ちゃんとやれよ!”って言われたら、“岡さん、あんたこそちゃんと棒振れよ!”って返したんです(笑)」(相澤氏)という出来事も。それでも、「岡さんはメンバーがイエスマンばかりじゃなくて、“そこ違うでしょ”と言ってくれる人のほうが好きだったね」(同)と述懐する。 出場者に岡さんの印象を聞くと、皆一様に優しい人柄を語っているが、音楽のプロであるバンドメンバーに対する接し方は別だったようだ。 「プロとしてのステージマナーも教えてもらいましたね。“走るんじゃない。ゆっくり悠然と歩くんだ”とか、MCをする時に“もっとゆっくりしゃべれ。それじゃ何言ってるか分かんないよ”とか。聴いてくれるお客さんがいるから、俺たちの音楽は成り立ってるんだとよく言っていました」(相澤氏) 葬儀は、その人柄を表すようなものだったという。 相澤氏は「出棺の時に、クリアトーンズのCDをかけたのですが、どんな曲にするんだろうと思ったら、『セントルイス・ブルース』で賑やかに送り出しまて、岡さんらしいなと思いましたね。生前、メンバーの葬式で“俺の葬式は湿っぽい雰囲気になるのは嫌だ。華々しくやってほしいな”と言っていたんです」と明かしてくれた。