「アンメット」出演でも注目の島村龍乃介が語る最新舞台への思いと映像の現場での学び
「舞台『弱虫ペダル』The Cadence!」から3作、小野田坂道を演じてきた島村龍乃介が座長を務め、2012年から続く「舞台『弱虫ペダル』」シリーズの最後を飾る「舞台『弱虫ペダル』Over the sweat and tears」が8月31日(土)より上演される。そこで座長・島村からこれまでの公演を振り返りながら本作への思いを聞くともに、映像作品に出演して感じた役者としての成長についても語ってもらった。 【写真】さわやかな笑みを見せる島村龍乃介 ■これまでと違う見せ方を考えることが出来た「THE DAY 2」 ──まずは3月に上演した「舞台『弱虫ペダル』THE DAY 2」の感想から聞かせてください。 島村龍乃介:ものすごく達成感がありました。これは「The Cadence!」も(2022年7月上演の「舞台『弱虫ペダル』The Cadence!」)も「THE DAY 1」も(2023年8月上演の「舞台『弱虫ペダル』THE DAY 1」)もそうでしたが、「このためにやってるんだな」って感じがしました。 稽古中は苦しいし、本番中も正直「少し休みたいな」とか、1日2公演ある日は「2公演目も走り切れるか不安だな」とか思うんです。それくらい大変な舞台だからこそ、終わったあとは達成感がものすごくあるし、それが自信にもつながります。「自分はやり遂げたんだ」って。 今回の「舞台『弱虫ペダル』Over the sweat and tears」もその気持ちを忘れずに挑みたいです。 ──「THE DAY 2」で得られたものや感じた成長は? 島村龍乃介:「THE DAY 2」で初めて、小野田が誰かの力になったんです。力になるというか、引っ張っていった。「The Cadence!」と「THE DAY 1」は己との戦いだったのですが、「THE DAY 2」は田所さん(滝川広大演じる田所迅)を助けたいという気持ちが強かったです。 “自分が引く”とか“小野田が引っ張っていく”という役割は、小野田自身初めてのことだったと思うんです。その姿を見て、「すごくたくましくなったな」と思いつつも、それをどう表現するのかというのはとても考えさせられた部分でした。 普段はおどおどしているイメージがある小野田を「THE DAY 2」ではたくましく見せることが僕の課題でした。「The Cadence!」や「THE DAY 1」とは違う小野田の見せ方を考え、表現できたことが「THE DAY 2」を通して成長したことじゃないかなと思います。 ──引っ張っていく、たくましい坂道を演じるために意識したことは? 島村龍乃介:いかに田所を小野田の世界観に巻き込めるかということを考えました。引っ張るシーンは、キツいシーンではあるのですが、小野田としては楽しいシーンでもあって。だからお客さんにいかに楽しんでもらうかももちろんですが、一番は田所さんにしんどさを忘れるくらい楽しんでもらうにはどうしたらいいかを考えていました。 それを考えていたときに気づいたのですが、小野田は、いい意味で全然空気を読まないんですよね。だから「なんで歌わないんですか?」くらいのテンションでいました。傍から見たら「しんどいからだよ」ってことなんですけど(笑)。それが小野田なのかなって。 ──今だから話せる印象的なエピソードがあったら教えてください。 島村龍乃介:新開(隼人)と御堂筋(翔)のスプリンター勝負の場面で、鯨井さん(演出を手掛ける鯨井康介)から、(レース結果を知らせる)ボードをただ出すだけじゃ面白くないというダメ出しがありました。鳴子くんのお芝居よりもボードの出し方についてのダメ出しが厳しくなっていったのが面白かったです。 本番中は鳴子くんがそのボードを出してハケたあと、ステージ袖にいる僕に毎回「どうだった?」と聞いてくるので、僕がわざと「全然違う」って返すボケがルーティーンになっていました(笑)。ずっと「違う」って返していたのですが、千秋楽で「OK」と返したらめっちゃ喜んでくれました。あれは面白かったな~! ■座長としてのこれまでの姿を最後まで貫きたい ──「THE DAY 1」の公演前に行ったインタビューでは「座長として何かすることは考えていない」と言っていましたが、「THE DAY 1」、「THE DAY 2」を経て、座長という意識に変化はありますか? 島村龍乃介:実はないんですよね。小野田を演じているからなのか、背中で引っ張っていくしかないという考えで。皆さん僕より年上ですし、「年下が頑張っているから頑張ろう」という焦りを感じさせることしかできないのかなと思っていて。各々がチーム内でも話し合っているので、僕があえて何かをするということはないし、僕も僕で自由にさせていただています。 ──確かに下からの突き上げというのが、坂道らしい座長の姿なのかもしれないですね。 島村龍乃介:はい。これは最後まで貫きたいです。 ──これまでに「舞台『弱虫ペダル』」シリーズに3作出演してきましたが、改めて、「弱虫ペダル」という作品の魅力はどこにあると感じますか? 島村龍乃介:登場人物一人ひとりが輝いていることかなと思います。小野田じゃなくても主人公になるんじゃないかなって。例えば御堂筋の過去を振り返るシーンのときは「今、御堂筋が主人公じゃん」って思いますし、誰のストーリーを切り取っても物語になる。各々が輝いているのが「弱虫ペダル」の一番の魅力だと思います。 あとは、みんなカッコよすぎる!僕、荒北(靖友)を演じてみたいんです。ずっと荒北やりたいって伝えているのですが、まだ小野田で(笑)。 ──「まだ小野田」(笑)。 島村龍乃介:全然チャンスが来ないんですよね。いつかやりたいです(笑)。 ──ちなみに荒北を演じたいのはどうしてですか? 島村龍乃介:カッコいいじゃないですか。見ていて一番カッコいいなと思うのが荒北なんです。 ──一番ご自身に近いなと思うキャラクターを挙げるなら? 島村龍乃介:いや~…いないですかね。みんな個性的すぎて。でもそれこそ颯希くんは普段からめっちゃ鳴子なんですよ。(山本)涼介くんも、やるときはやるけど、オフになったらふにゃふにゃで、巻島(裕介)っぽい。 広大くんも田所に似ているんですよね。田所って怖いもの知らずじゃないですか。広大くんも死ぬ気で芝居をしている感じがして、ときどき、舞台上でそのまま倒れてしまうんじゃないかと怖くなる。それくらい熱量がすごいです。 そう考えると、僕は誰にも似ていないなと思います。でも理想は真波(山岳)。普段はふわふわしているけど、やるときはやるあの感じがカッコいいなと思います。あれ、僕、カッコいい人になりたいんですかね…?いや、もちろん小野田もカッコいいですけど。なんていうか…ちやほやされたいです(笑)。 ■最新作の楽しみは「ようやく真波と走れる」こと ──8月からは「舞台『弱虫ペダル』Over the sweat and tears」の上演が始まります。「舞台『弱虫ペダル』」シリーズの最終公演にもなりますが、楽しみなことはありますか? 島村龍乃介:荒北と真波と3人で走れることです。特に真波とはずっと「また一緒に走ろうね」って言って……の繰り返しだったので、僕も真波役の拓人くん(中島拓人)も「いつになったら走れるんだろう…」って言っていて(笑)。 3日目を描く今作でようやく走れるので楽しみですね。ただ、体力的には最後まで持つのか心配です。今、「The Cadence!」をもう一回やれと言われても絶対にできないですもん。 ──「舞台『弱虫ペダル』」シリーズに3回出演している間にコツをつかんだりは? 島村龍乃介:それが…コツがないんですよ。毎回「お客さんがいるから」という気持ちと、あとはステージ袖でみんながシリコンバンドを振りながら応援してくれていたので、その応援を受け取って頑張れていました。 コツをつかんでいる方や、楽に走る方法を見つけている方もいらっしゃると思うのですが、僕は見つけられなかったですし、たぶん小野田もそういう走り方はしないと思います。気合いで行くしかないなと思っているので…そういう意味では、最後、どんな景色が見られるのかは楽しみですね。 ──シリーズの最後を担うことにもなりましたが、そこに対するプレッシャーや不安はありますか? 島村龍乃介:うーん、不安はあまりないです。今まで通りやろうと思っています。プレッシャーを感じたら、変にいろいろ考えすぎてできなくなってしまうと思うので、いつも通り、ただインターハイの3日目を走るという気持ちで挑むと思います。 ■映像作品の現場での課題「すぐ感情を作れるように」 ──最近は映像作品の出演も続いています。特に「アンメット ある脳外科医の日記」(カンテレ・フジテレビ系)第2話の出演の際にはSNSでも学びが多かったと投稿されていましたね。 島村龍乃介:はい、監督がよりリアルを求める方で。僕もリアルな芝居をしたいという思いがずっとあり、とても大きい経験になりました。共演者の皆さんもどこから芝居なのかがわからないくらいリアルなお芝居をされていて。僕も皆さんのお芝居に引っ張っていただき、本当にドラマの世界の中で生きているような感覚になりました。 役についてもものすごく考えましたし、考えることの楽しさも味わうことができました。学ぶことが多すぎて、実はお芝居しているときのことをあまり覚えていないんです。それくらい自然にできる環境を作ってくださったことにも感謝です。 ──学びの多かった現場だったと思いますが、「アンメット」の撮影を経て感じたことはどのようなことでしたか? 島村龍乃介:それまで、ドラマの撮影はポンポン進むイメージがありました。実際、ものすごくスピーディに撮影が進む現場を経験して、そのスピード感に追いつけなくて悔しい思いをしたことがあったんです。どうしても感情が作りきれなくて。 でも「アンメット」は長回しもありましたし、「こういう撮影の仕方もあるんだ」と勉強になったと同時に、とてもやりやすく感じました。ただ、すべての作品がそういう環境ではないので、ポンポン進む現場でもよりリアルに芝居をするにはどうしたらいいのか、ということを考えるようになりました。そういう現場でもすぐに感情を作れるようにならなければと、今回を経て改めて強く感じました。 ──そんな経験もして、舞台『弱虫ペダル』シリーズもこの夏で終わります。この先の俳優としての目標や展望を最後に教えてください。 振り幅を広げたいと思っています。小野田を演じていて感じることなのですが、小野田は自分と似ていないからこそ、毎回「こういう考えもあるんだ」という発見があります。そうやっていろんな役を演じて、いろいろなことを知っていきたいなと思います。そのためにも幅広い役柄に挑戦して、たくさんの人のことを知っていきたいなと思っています。 ◆取材・文=小林千絵 撮影=八木英里奈 スタイリスト=藤長祥平 ヘア&メーク=Aki