前田優光さんの新作「ゲルニカを観る人々」

　新庄市出身の画家前田優光さん（75）＝仙台市泉区＝が11月、仙台市でプロ活動25周年を記念した個展「メルヘンの世界」を開く。今年7月、ステージ4の肺がんと診断されて闘病中で、開催断念も頭をよぎったという。仲間の励ましを受け「少しでも病気で悩んでいる人の力になれば」と意を決した。「山形からもぜひ来場してほしい」と願っている。 　前田さんが画家を志したきっかけは、温かみのある風景画で親しまれた安野光雅さん（2020年12月死去）の言葉だ。1993年、安野さんの個展を見に行き、自分が描いたスケッチを持参したところ「いいねえ」と褒められた。当時は40代、郵政省の課長代理で、プロになるか迷っていたが、「絵の基本は好きかどうか。挑戦してみたら」と、背中を押された。 　2000年に本格的に画家としてプロ活動を開始した。精力的に絵筆を取り、仙台や山形、福島、東京などで個展を重ねた。11年8月から13年6月まで本紙で49回にわたって「前田優光のやまがたスケッチ旅」を連載した。

本紙連載「やまがたスケッチ旅」で描いた「庄内平野」

　咳（せき）の症状が止まらず仙台厚生病院を受診し、今年7月、肺がんと診断された。進行したステージ4で、大腸や首にも転移していることが分かった。治療のため8月の大半は入院生活を送った。現在、手のしびれや味覚障害などの副作用はあるものの、症状は安定しているという。 　今月には山形市で個展を計画していたが、治療のためかなわなかった。11月に仙台で予定していた個展も諦めかけたが、趣味のバイク仲間から「作品搬送などを手伝うから」と励まされ開催を決めた。平和への願いを込めた新作「ゲルニカを観（み）る人々」や本紙に連載した「やまがたスケッチ旅」の原画など、約60点を展示する。 　前田さんは「今でも新庄まつりのお囃子を聞くと涙が出てくる」と古里への思いを語る。「山形での個展は今回断念したが、希望を持つことが生きる力になる。好きなことをすれば免疫力も上がる。ぜひ仙台会場に来てほしい」 　個展「前田優光のメルヘンの世界～25周年の軌跡・原点」は11月5日から10日まで、仙台市青葉区の晩翠画廊で開かれる。問い合わせは同画廊022（713）6230。