AI使い理想の歯並びシミュレーション マウスピース矯正、容易な半面トラブルも 開始には理解必要
[県歯科医師会コラム・歯の長寿学](347) マウスピース矯正をご存じですか? まず、現在の歯並びを機械でスキャンし、そのデータから人工知能(AI)を使って理想とする歯並びをシミュレーションします。そして、理想の歯並びにするために必要な枚数のマウスピースを作製し、そのマウスピースを患者さんご自身が装着することでできる矯正治療のことです。シミュレーション動画は歯がどのように動いていくのか、どのように並ぶのかを可視化することができ、患者さんのモチベーションアップにつながります。 【図】「歯を残すことこそが善で、抜歯は悪」と言い切れない治療 抜歯の選択どうあるべきか マウスピースは透明なので目立ちにくく、食後の歯磨きもしやすいので衛生的です。歯科医師側としても、機械の操作さえ分かれば簡単に作製することができるので、最近はマウスピース矯正を取り入れる歯科医院が増えています。特に沖縄ではマウスピース矯正による部分矯正が多いようです。 しかし一方で不満の声を聞くことも多くあります。「歯は並んだが出っ歯に見える」「かめなくなった」など、東京や沖縄でさまざまな相談を受けました。 多くはマウスピース矯正が原因ではなく、AIには骨の厚みや歯根の形が分からないため、シミュレーション動画では実際の人体では不可能な動きをすることがしばしばあります。それらを見極め、歯科医師が手直ししないといけません。術者側がワイヤ矯正同様にマウスピース矯正の理解を深め、習熟度を高める必要があります。 他にも多くのポイントがありますが、どんな歯科医師でも簡単にマウスピース矯正を始められるようになり、便利になったのはいいことですが、容易にできる半面トラブルも増えてきているのが現状です。 マウスピース矯正にはいろいろな種類があり、適応症例を見極めることも大事です。即決で歯科医院を決めるのではなく、複数の歯科医院で話を聞き、理解を深めてからマウスピース矯正を始めることが望ましいかと思います。(伊波幸作 Kousaku DENTAL OFFICE=那覇市)