戦争が起こると金の価格は上がる…とも限らない?ロシア・ウクライナ紛争など「4つの実例」から紐解く“戦争”と“金価格”の関係性
戦争が起こると、大抵の場合「金」の価格は上昇します。戦争の影響がどのような形で表れるかわからない以上、「安全資産」として金を手元に置いておきたいと考える投資家も多いでしょう。そこで本記事では、菊地温以氏の著書『最強のポートフォリオをつくる金投資入門』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集し、実例とともに、戦争と「金価格」の関係性について解説します。 【早見表】年収別「会社員の手取り額」
戦争が起こると金はどうなる?
歴史的には戦争が起こると、金の価格が一般的に上昇する傾向があります。これは、戦争が引き起こす不確実性と経済的リスクに対する防衛策として、投資家が「安全資産」である金を選好するためです。 つまり、「地政学的リスク」が高まると投資家の不安から金の価格が上昇しやすい構造と同様のことが、戦争が発生した際にも起こります。 むしろ、「地政学的リスク」とは、戦争や紛争の発生を投資家に想起させ、その不安が価格の上昇につながっていると考える方が正確かもしれません。 また、「地政学的リスク」による価格の変動要因が主に投資家の「不安」であることに対して、戦争が発生した場合には明確に異なる条件があります。 それはすでに戦争が発生していることによる「サプライチェーンの混乱」や「軍需支出の増加」とそれに伴うインフレの発生です。 たとえば、金そのもののサプライチェーンの混乱はダイレクトに金価格に影響を与えます。とくに、紛争地域が金の主要生産地である場合、その供給が妨げられ、金の価格に上昇圧力がかかります。供給が減少する一方で、経済不安から安全資産としての需要が高まるため、価格がさらに上昇しやすい傾向があります。 ■コストプッシュ型のインフレ さらに、戦争や紛争が主要な物流ルートを遮断すると、商品や原材料の輸送コストが増加します。海上輸送路の閉鎖や航空輸送の制限は、輸送費用を押し上げ、それが消費者価格に反映されます。くわえて戦争により多くの労働者が戦地に動員されると、生産活動に必要な労働力が不足し、生産コストが増加します。 このような、戦時下におけるサプライチェーンや生産環境の混乱は、結果的にコストの上昇が物価を押し上げる「コストプッシュ型のインフレ」を引き起こしやすいのです。このインフレも金価格上昇の要因となります。 ■デマンドプル型のインフレ また、戦争が長引くと軍需支出が増大し、戦費を賄うために各国政府は大規模な借入や紙幣の発行を行うことがよくあります。これは通貨の価値を下落させるとともに、インフレを引き起こす要因となるのです。 また政府による軍事支出の増加は軍需品や関連資源の需要を急激に高め、これら軍需品・関連資源の需要が供給を上回り、価格が上昇します。これにより、需要の拡大が物価を押し上げる「デマンドプル型のインフレ」が引き起こされることもあります。 インフレ環境は資産の価値保存手段として金の需要を高め、結果として金の価格上昇につながりやすいです。戦争の発生をきっかけとするインフレの進行も、最終的には金の価格が上昇する要因として考えることができます。
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