吉野家紅ショウガ“直箸”食べ男に実刑判決…大麻取締法違反も含む懲役2年4か月、罰金20万円は妥当か【弁護士が解説】
SNS上では実刑判決に「納得」の声もあったが
威力業務妨害罪の法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金の重い犯罪だが、初犯であれば執行猶予付きの判決となることが多い。そのため、執行猶予がつかずに実刑判決が下された今回の「紅ショウガ事件」について、SNS上ではさまざまな意見が出ている。 迷惑行為によって世間を騒がすニュースが多いことから、「こういう迷惑系は処罰ちゃんとすべき」「もっと重罪扱いでもいいと思う」とSNS上でも納得の声が大勢を占めた。 一方で、今回の判決は、大麻取締法違反と併せての判断だったことから、「少し厳しいと思えたが納得がいった」「実刑になったけど大麻取締法もあってのことだからな」との声も上がっており、より重い罪と合わせた判決であることが注目すべきポイントとなっている。 今回は刑事事件としての判断だが、店に発生した損害を賠償する民事の賠償責任は当然なくなるわけではない。 目立つために迷惑行為をしてしまうと、刑事・民事の両面で責任を追及され、人生を狂わせてしまうほどの大きな問題に発展してしまうことはいうまでもないだろう。
刑事弁護に詳しい弁護士の評価は“妥当“
刑事事件に詳しい、荒木弁護士は、今回のこの判決を次のように評価する。 「報道によると、今回の男性は過去に服役経験があり、刑の執行を終えて間もなく今回の犯行に及んだとのことです。また、営利目的で大麻を栽培するなどした大麻取締法違反という重い犯罪も認定されていることを踏まえれば、実刑判決となることは、当然の結果だと考えられます」 そうしたことから、荒木弁護士は、「今回の男性は、上記のような特殊性がありますので、仮に動画を拡散していなくても、実刑判決となっていた可能性が高いと思います」と判決は妥当とした。
民事では数百万円程度の損害賠償か
また、民事での損害賠償について荒木弁護士は、「理論的には、動画拡散後に売り上げが減少したり、株価が下落したりすれば、迷惑行為との間に因果関係がある損害になり得ます。しかし、実際のところ、これらとの因果関係を立証することは困難だと思います。そのため、仮に裁判で争われた場合、現実的な損害としては、被害店舗において紅ショウガが入っていた容器の清掃・中身の廃棄交換費用、本件についての広報費用といった費目に限られる可能性があります。その場合には、高くても数百万程度の損害額として認定される可能性があるでしょう」と解説した。 その上で、いわゆる「迷惑系YouTuber」に対し、次の言葉を送った。 「最近ではいわゆる『迷惑系YouTuber』といったジャンルで、世間からの注目を集めようとしている人がいます。しかし、刑事では犯罪行為にあたる可能性があるだけでなく、民事でも高額な損害賠償請求を受ける可能性があるため、決して行うべきではありません。仮にそのような行為をしてしまった後に、十分反省して更生できたとしても、現代ではいわゆる『デジタルタトゥー』としてネット上に映像等が残ってしまう可能性があります。そのようなことは成年・未成年ともに変わりはありませんので、日頃から犯罪行為を行わないようにするだけではなく、ネットリテラシーについても意識して生活する必要があります」(荒木弁護士)
弁護士JP編集部