「カープが勝つこと」に重きを置いて選手を支えていく。白濱裕太氏が胸に刻むスコアラーとしての〝こだわり〟
カープ球団を支える様々な人たちは、どんな仕事をしているのか? さまざまな立場、場所からカープを支える人たちにスポットライトを当てる本連載。 【写真】現役時代、ブルペンで投手の球を受ける白濱裕太スコアラー 第1回目は、カープ一筋19年の捕手として活躍した白濱裕太スコアラーに話を聞いた。『チームが勝つために』という思いを胸に、現役時代とは異なる立場で選手と向き合う白濱スコアラーが語る、『スコアラーとしてのこだわり』とは。(全2回・第2回) ◆どっちつかずな意見を選手に言わないように意識 スコアラーと選手との関わり方で言うと、まずは試合前のミーティングになります。そこで相手の投手、打者の特徴をさまざまな形で選手に伝えます。データだけでは伝わりにくい部分は、言葉で伝えるようにしています。試合でベンチ入りするときは、カープが守りのときは好きな場所にいて、気になることがあればコーチの方々に思ったことを伝えることがあります。逆に攻撃のときは、新井(貴浩)監督から横にいてくれと言われているので、聞かれたことにお答えするようにしています。 僕はスコアラーになって2年目になりますが、選手時代よりも大変かもしれません(苦笑)。僕たちスコアラーが出すデータ、資料というのは、選手の目に触れるまでにすごく労力がかかっていますが、そういう部分は選手時代にはなかなか見えていなかったことです。 仕事へのこだわりという部分でいうと、特別な事はないですが、『どっちつかずな意見』を言わないようにすることです。現役時代、試合前に相手投手のデータ等がパーセンテージでホワイトボードに書かれていたのですが、その確率が分かりやすくて、僕はそれを見ていました。そういう数字的な根拠を元に、選手には「こうだよ。そうでなかったら、ごめん」と、どっちつかずな意見を伝えて迷いを生むよりも、思い切り割り切る、スコアラーである僕自身が『迷わないように伝える』ことを意識しています。 スコアラーとしての〝やりがい〟は、『チームが勝つこと』、そして『選手がヒットを打つ、抑える』場面を見ることです。そういう意味では、思いは選手時代と変わりません。現在は裏方として、一歩引いた立場でカープに関わらせていただいていますが、カープが負ければすごく悔しいですし、勝てばすごくうれしいです。ですので、『カープが勝つために』という思いが強いです。 スコアラーが相手の球を10球しか見ないよりも、100球見れば、情報量は変わります。その情報をどれだけ選手に伝えることができるかが、大事だと思っています。選手から「ありがとうございます」という言葉をもらえるだけでも、すごくホッとする気持ちがあります。また「この選手はどうなんですか?」と聞いてもらえるだけでも、頼りにしてもらえているなと感じます。ある意味責任がありますし、そこで僕らがどれだけ選手の背中を押す一言を言ってあげられるかが大事だと思っています。すべてが上手くいくスポーツではないですが、選手には迷いなく打席に向かっていってほしいですし、迷いなくマウンドに立ってほしいと思っています。 スコアラーは『選手を言葉で押せるポジション』だと思っています。自分がプレーするわけではないので、他力なところがあるかもしれませんが、逆に勝手なことも言えないですし、簡単なことも言えないと思っています。 広島にいる子どもたちはみんなカープが大好きです。そのように有り続けるためには、カープが勝たないといけません。そのためにはスコアラーの存在は本当に大事だと思っています。そういう部分に責任を感じながら、自分で感じたことをチームに伝えていき、とにかく『カープが勝てるように』ということに重きを置いてこれからもチームと選手を支えていきたいです 高校を卒業してからずっと選手としてプレーさせていただいて、引退してからもお仕事をいただいています。僕にとっては、なくてはならない存在です。勝つために、やるべきことをやって、選手時代と変わらずチームに貢献していきたいです。 白濱裕太(しらはま・ゆうた) 1985年10月31日生、大阪府出身。広陵高-広島(2003年ドラフト1巡目)。広陵高時代は強肩強打の捕手として活躍。西村健太朗(元巨人)とバッテリーを組み、2年生春から4回連続で甲子園に出場し、3年春には全国制覇を経験。2003年ドラフト1巡目でカープに入団。現役引退するまで19年間、捕手としてチームを支えた。引退後、カープ球団のスコアラーに転身。現在は中日ドラゴンズ担当の先乗りスコアラーを務める。