<ザ・トラベルナース最終回>山崎育三郎“薬師丸”、ついに過ちを認めて謝罪「全ては私の未熟な改革が原因」
岡田将生と中井貴一が“クセ強ナース”を演じる痛快医療ヒューマンドラマ「ザ・トラベルナース」(毎週木曜夜9:00-9:54、テレビ朝日系)が、12月19日に最終回を迎え、院長・薬師丸(山崎育三郎)が自らの過ちを認め、謝罪する様子が描かれた。また、新たな勤務先でも歩(岡田)と静(中井)の笑いを誘う言い合いの様子が見られ、続編への期待を高めた。(以下、ネタバレを含みます) 【写真】真剣な横顔もカッコいい!手術着姿の歩(岡田将生) ■クセ強敏腕看護師コンビが医療現場を改革 本作は、手術の際に医師を補助し一定の医療行為を実施できる「NP(=ナース・プラクティショナー)」の那須田歩と謎多きスーパーナースの九鬼静のクセ強看護師コンビが、“患者ファースト”の精神で医療現場を改革していく物語のシーズン2。 トラベルナース(人手不足の病院や施設にて期間限定で働くフリーランスの看護師)である彼らの今シーズンの勤務先は、基幹病院である「西東京総合病院」。同病院では、新院長・薬師丸が働き方改革を中心とした組織変革に次々と着手。現場の状況より自分の理想を優先して強引に改革を進める薬師丸に静と歩は闘いを挑んでいった。 ■「困ってるのは、患者なんですよ!」 西東京総合病院がランサムウェア攻撃を受け、ネットワークがダウン。コンピューターが使えなくなり、院内は大混乱に。電子カルテも閲覧不能で、薬師丸が歩以外のナースを全員解雇してしまったため、入院患者の情報を把握していない新たに採用されたナースたちは戸惑うばかり…。そんな中で、歩は孤軍奮闘していた。 歩は、対策会議中の薬師丸の元に乗りこみ、現場の混乱と、重篤患者を優先する事や近隣の病院に協力を仰ぐなどの具体的な対応を訴えた。そして、自身の海外での経験から、復旧に時間がかかる場合は要求額を払って解決するケースも多いとアドバイスした。だが、薬師丸は「要求に屈したら、病院が元通りになっても世間から非難される」と却下。この非常事態でもまだ対面を気にする彼に、歩は「困ってるのはアンタたちじゃない。患者なんですよ!」と、声を荒げた ランサムウェア攻撃は、スキャンダルの追求から逃れるために入院している黒い政治家・灰原(大和田伸也)をかくまっていると判断したサイバーテロ集団の仕業だった。薬師丸は結局、これ以上の事態の悪化を避けるためには犯人の要求額を払うしかないと判断。この病院が“災害拠点病院”の指定を受ける口利きを頼んでいる手前、灰原の言いなりになっていたが、要求額を出すように灰原に頼んだ。病院の悪評は灰原のデメリットにもなると説明するも、灰原は「冗談じゃない。知るか」と相手にもしない。「私が破滅すれば、あなたも同様」と言う薬師丸を「関係無い」と切り捨てた。 ■「ナースも医師も関係ない!目の前に患者が居れば救うだけ」 そんな中、すい臓がんステージ3の入院患者・めぐみ(若村麻由美)の病状が急変。彼女は1年半前までこの病院のナースで、当時外科医だった薬師丸がミスで患者を死なせた責任を肩代わりして病院を去ったが、薬師丸の執刀を希望して再び現れたのだった。高難易度の手術のため、失敗したら自分の汚点になる上に、このまま亡くなれば“過去の過ち”も葬り去られると考える薬師丸は、緩和ケアに切り替えようとしていた。 だが一刻を争う状況となり、歩は緊急手術を薬師丸に要請。しかし薬師丸は「今はそれどころではない」と拒否。「すでに手術適応外」「この状況で満足なオペができるわけがない」など言い訳を並べる薬師丸に、歩は、めぐみを「また」見捨てるのか、と強烈な一言をぶつけた。 歩は続けて、めぐみが今でも外科医としての薬師丸を信じている事、ひどい目に遭わされたのにまだ薬師丸を信じたいと思っている事を訴えた。黙って聞いているだけの薬師丸にイライラしたのか、歩は「治してほしいって患者が待ってるんだよ!!アンタ、医師だろ!!」と、彼を怒鳴りつけた。 この手術をしないと一生後悔する、と歩が言っても、もう自分は医師ではない、と動こうとしない薬師丸…。ブチギレて「もういいです。僕がやります!」と言った歩は、ナースには無理と言いかけた薬師丸の言葉を遮り、「ナースも医師も関係ない!目の前に患者が居れば、救うだけ」と強い口調で告げて部屋を出て行った。 ■静の広島弁、最終回でもさく裂! 一方、病室では、薬師丸にクビにされた吉子(安達祐実)たちナースが自主的に戻り、患者の看護に当たっていた。カルテがなくても適切な対応をする彼女たちを見た薬師丸は、静が常日頃から言っている「ナースは人を見て人を治す」という言葉の意味が少し分かった気がする、と言った。 それに対し、静は「私たちはカルテ以上に患者本人を見ている」と言い、患者だけでなく薬師丸の事も見ていると告げた。そして、薬師丸(の考え)を治す事が、この病院にとって一番の改革だと考えている事も告げた後、薬師丸の耳元に近づき、「いつまで突っ立っとるんじゃい!」と広島弁でドスをきかせた。 めぐみの手術は、若い外科医の小山(渡辺大知)が執刀。だが、3DのCT画像が表示できない現状ではこれ以上進められなくなってしまった…。その時、手術室に薬師丸が入ってきた。しかし、優秀な彼をもってしても手術は難航。彼はNPの歩に「手を貸してほしい」と頼み、2人で協力して、無事に手術を成功させた。 薬師丸は病床のめぐみの元を訪れ、彼女の手を両手で包みながら「申し訳ありませんでした」と、涙ながらに謝罪した。そして、廊下に居た歩と静に深々と一礼し、2人の姿が見えなくなるまで顔を上げる事はなかった。 そして、彼は記者会見を開き、一連の責任を取る形で院長職を辞任。灰原の件についても任意聴取に協力し、ミスで死なせた患者の遺族にも真実を話して謝罪する事にした。もう医療の世界に戻る事はないと決意した薬師丸の表情は、これまで見た事がないほど穏やかだった。 ■改革の目的を見失ってしまっていた薬師丸 薬師丸は、静と歩の“敵”ではあったが決して悪人ではなかった。「病院を、医療界をより良くしたい」という思いは本物で、私利私欲で病院の改革を目指したのではない。だが、いつのまにか「誰のために、何のために」より「改革」自体が目的となってしまった。「クリーンな改革」の方法がクリーンではなくなっていく事に気付く余裕を彼は失っていたのだ。 「全ては私の未熟な改革が原因だった」と薬師丸は言っていたが、原因は彼の“傲慢さ”にもあったように思う。自分の身代わりにしためぐみに感謝するどころか「ただのナースと医者の自分、どちらが価値があるかは明白」と平然と言い放った傲慢さ、現場の声に耳を傾けずワンマンに理想を押しつけた改革…。 そんな彼の危うさを静はいち早く見抜き、事あるごとに遠回しに彼に“気付き”のきっかけを与えていた。が、薬師丸には“ただの邪魔者”でしかなかった。もっと早く自分の過ちに気付いていれば、違った結果になっていたかもしれない。 薬師丸が去った西東京総合病院には、ナース紹介所の千晶(浅田美代子)の尽力で、塔子(寺島しのぶ)他、クビになったナースたちが復帰。歩と静はフィリピンの病院で勤務する事になった。国が変わっても「人を見て人を治す」事は変わらない。歩と静の活躍と痴話ゲンカのようなほほ笑ましいやり取りを、いつかまた見られることを願う。 ◆文=ザテレビジョンドラマ部