チェ・ジウ、恐怖と絶望を描いたスリラーで新しい挑戦「怖いのは苦手(笑)。日本の可愛いアニメも好き」
チェ・ジウの7年ぶりとなるスクリーン復帰作「ニューノーマル」が、日本で絶賛公開中! 日常に潜む恐怖と絶望を描いた同作は、新感覚の体験型スリラーとして早くも話題を集めている。今回、そんな「ニューノーマル」でこれまでのイメージを覆す演技に挑戦したという彼女に来日インタビューを実施。撮影中のエピソードや日本のファンへの思いなど、たっぷりと話を聞いた。 恐怖と絶望を描いたスリラー「私にとって新たな挑戦」 ――久しぶりのスクリーン復帰作となりますが、どのようなお気持ちですか? 撮影前と撮影後で心境の変化などあれば、教えてください。 チェ・ジウ:今作は私にとって新たな挑戦となりました。撮影が始まる前は「私は上手くやれるかな?」「どのように表現をしたらいいのかな?」という不安や心配が先立ちましたが、そのような気持ちを解消するために監督とたくさん話をしました。いざ撮影現場に立つと、現場ならではの雰囲気があるんです。今回は、狭い空間の中2人で演技をすることがほとんどだったのですが、その雰囲気に後押しされて自然と心地の良い緊張感が湧いてきました。作品のリアリティも、より高まったと思います。そして、撮影が終わってからは、「今回初めて挑戦したことが上手くいってよかったな」と思いました。私の新たな挑戦を、観客の皆さんはどのように受け入れてくれるのかとても気になっていますし、ワクワクしています。新しい一面に良い反応を頂けたら嬉しいです。 ――今回ヒョンジョンというキャラクターを演じられましたが、劇中では彼女のバックグラウンドについて、特に触れられていませんでした。チェ・ジウさんなりのヒョンジョンのキャラクター像や、役作りのエピソードなどがあれば教えてください。 チェ・ジウ:撮影現場でもキャラクター像に関する事前説明などはなかったのですが、監督が私に「インスピレーションを与えてくれる作品で、役作りの参考になるだろう」と1本の映画をおすすめしてくれました。フリッツ・ラング監督の「M」という古典作品なのですが、実際に観てみると「監督はこういう風に考えながら撮影をしているのだな」と理解ができた気がしました。確かに、ヒョンジョンがどのような過去を経て現在に至ったのか、そういった部分は劇中で触れられていません。そこで、私と監督は想像を働かせるんです。幼い頃はきっとこんな子だっただろうな、こんな事件が彼女の身に起こったかもしれないし、起こらなかったかもしれない。どのような過程を経て今に至ったのかを考えながら、ヒョンジョンというキャラクターを作っていきました。 ――普段のチェ・ジウさんの姿からは想像もつかないような衝撃的な役柄ですが、オファーを受けた時の心境はいかがでしたか? また、キャスティングの経緯なども気になります。 チェ・ジウ:最初にシナリオを見せていただいた時に、とても面白いと思ったんです。ただ単に怖いというだけでなく、どこかユニークでウィットに富んでいました。「このような作品の登場人物たちを誰が演じるのだろう?」と、とても気になっていたのですが、まさか私だとは思っていませんでした。これまで演じたキャラクターとまったくイメージが異なるので、最初は監督に「私にできる気がしません」「ちょっと自信がありません」と消極的な姿勢を見せてしまいました。ところが、監督はそんな私に「大丈夫だ、ぜひやってほしい」とおっしゃってくれました。実は、監督はシナリオを書いている時点でチェ・ジウの新しい一面を見せたいということで、私が演じることを念頭に置いていたそうです。私自身も皆さんに新しい一面をお見せしたいと思っていましたし、監督が以前手掛けた「1942奇談」「コンジアム」はホラー映画として大変人気を得た作品なので、監督を信じてやってみようと思えました。 知らされていなかった演出「完成した作品を観て」 ――「ニューノーマル」はオムニバス形式ではありますが、それぞれのストーリーが繋がっていく構成になっています。実際に仕上がった作品を見て、ご自身のパートや他の俳優さんのパートを見ながら感じたことを教えてください。 チェ・ジウ:この映画では、「孤立」という言葉が1番のポイントになります。もちろん事前に出演者の情報は共有されていましたが、皆さんが演じるキャラクターの細かい役割までは把握していませんでした。監督からは、オムニバス形式でストーリーが繋がっていくということを聞かされていなかったので、実際に編集されたものを観て初めて「ああ、こんな風に物語が繋がるんだ」ということがわかりました。事前情報がなかったおかげで、演じる側も知らず知らずのうちに自然な繋がりを表現できたようで私自身、完成した作品を観ながらとても面白いと思いました。 ――過去のインタビューで、「自分の撮影が終わっても、現場に残って他の方の撮影を見ている」とおっしゃっていましたが、今回の撮影現場ではいかがでしたか? チェ・ジウ:実は、「ニューノーマル」の撮影では、監督が徹底して他の出演者の撮影現場を公開しなかったんです。振り返ってみると、そのような状況でかえって自分のキャラクターに集中できたと感じます。出演者同士の交流も、同じエピソードに出演する俳優さんとだけという形で不思議なことに、「ニューノーマル」は撮影前の台本読みも実施されませんでした。作品ができあがって初めて「こういうことか」と、全体の構成を知ることができました。 ――エピローグでは、登場人物たちが1人で食事をする姿も孤立を強調していて印象的です。もともと韓国では1人で食事をする文化があまりありませんが、チェ・ジウさん自身は普段1人で食事することはありますか? チェ・ジウ:家で過ごしている時は、仕方なく1人で食べることがあります。ただ、個人的には家に1人でいることは好きですが、1人ごはんを楽しむほうではないです。家にいる時はできるだけ家族で食卓を囲むようにしていますし、仕事中もスタッフの皆さんと一緒にご飯を食べるのが好きです(笑)。 ふと幸せを感じる瞬間「子供の成長を見守ることが」 ――「私たちの日常に潜む恐怖」が今作の大きなテーマですが、チェ・ジウさんが日常の中で恐怖を感じる瞬間はありますか? 反対に、ふと幸せを感じる瞬間などもあれば教えてください。 チェ・ジウ:日常の中で感じる恐怖と言いますと「ニューノーマル」のイントロ部分でニュースが流れるのですが、これは監督が韓国で実際に起きた事件を編集して作ったものです。ですので、最近はニュースに触れること自体がとても怖いと思います。本当に言葉にならないような事件が起きていますが、それが私たちの暮らす世の中であることも事実です。私たちはそんな世の中を生きていかなければならないので、1つひとつの瞬間に幸せを感じながら生きていこうと心掛けています。最近は子供の成長を見守るのが私にとって1番の幸せです。日々幸せを実感する中で、自分の出演する「ニューノーマル」が公開されるということにもワクワクしています。 ――「恐怖が日常になってしまった時代」というキャッチコピーも、現代を生きる多くの人々の胸に刺さります。以前は日常ではなかったものが、すっかり日常になってしまったと感じる瞬間はありますか? チェ・ジウ:3年ほど続いたコロナ禍は、21世紀を生きていく中で誰もが想像できなかった出来事だと思います。そして、ニュースを見ていても、以前までは信じられないような事件が日常になってきていることを実感します。例えば、インターネットで「○○を殺す」というような殺害予告をしたり、道を歩いていて面識のない人から刃物で刺されたり、銃で撃たれたり誰にとっても絶対に起こってほしくないような事件が実際に日常的に起きてしまっていることに恐怖を感じます。 好きな作品は?「怖いのは苦手(笑)。日本の可愛いアニメも好き」 ――「ニューノーマル」のリアリティあふれる恐怖は韓国の映画ファンの間で大きな反響を得ましたが、チェ・ジウさんは普段スリラー作品をご覧になりますか? チェ・ジウ:(強く首を振って)怖いのは苦手です(笑)。ただ、怖いだけならまだ大丈夫なのですが、急に何かがワッと出てくるような、びっくりするようなシーンは心臓が破裂しそうになります。監督の直近の作品「コンジアム」も何度も観たのですが、結局最後まで観られませんでした。怖くて(笑)。監督にも「『1942奇談』は観られたのですが、『コンジアム』だけは怖くて最後まで観られませんでした」と話しました。 ――では、好んで見るジャンルや、おすすめの作品はありますか? チェ・ジウ:映画やドラマはもちろん、日本のアニメも好きです。私は様々なジャンルを観るほうです。ヒーローものも好きですし、ラブストーリーも好きですし、コメディも好きです。日本の可愛いアニメもむしろ、怖くなければジャンルを問わず好きです(笑)。 ――怖いものが苦手でいらっしゃいますが、今回の撮影によって日常生活に影響が出ることはなかったのでしょうか? 夜、1人でトイレに行けなくなったり。 チェ・ジウ:(笑)。以前までは確かに、実体のないものが出てくる映画を見た後に「お化けが怖い、幽霊が怖い」と思っていたのですが、最近は人間の怖さを感じますね。人間同士だから安全という、壁のようなものがなくなってきている気がします。ですので、現実で見るニュースのほうがよっぽど怖いです。先ほど申し上げた殺害予告の話ですとか劇中のエピソードにはなりますが、ドンウォン君(チョン・ドンウォン)が出演している部分のエピソードも本当に人間の怖さを感じます。 日本ファンへの思い「これからも機会が増えたら嬉しい」 ――今作が久しぶりのスクリーン復帰となりましたが、撮影前に準備やウォーミングアップのようなことはされましたか? チェ・ジウ:映画は本当に久しぶりですが、韓国ではテレビドラマだけでなくバラエティ番組や広告、CMの撮影などでコンスタントに活動していたので、ブランクを感じることなく仕事を続けられています。ただ、作品を通じて日本の皆さんにお会いすることは本当に久しぶりです。先日も「ブラックペアン シーズン2」の舞台挨拶で日本に来ましたが、今でも私のことを覚えていてくださって、温かく迎えてくださって感動しました。あまりブランクを設けずに活動していますので、演技に対しても常に開放的な心を持っています。今回の「ニューノーマル」という作品に関しては、意外なキャラクターと意外な作品ということもあって、監督からインスピレーションのヒントを得たりして、試行錯誤を重ねながら演技を準備しました。 ――出産後も積極的に活動されています。最近ではバラエティ番組でもお見かけしますが、お子さんが生まれる前と後で変化した部分はありますか? チェ・ジウ:子供が生まれてからは、感情の幅がとても広がった気がします。今後の作品で母親役を演じる機会があったら、より共感して、その気持ちを自分のことのように感じられると思いますし、以前よりも成熟した演技を見せられるようになったのではないかと、期待しています。 ――「ニューノーマル」や「ブラックペアン シーズン2」の出演と、日本での活躍が話題になっています。コロナ禍もあり、なかなか直接お会いできない期間がありましたが、こうして会えるようになって、日本のファンの皆さんも本当に喜んでいますが、心境はいかがですか? チェ・ジウ:公式スケジュールで日本に来ることは本当に久しぶりですが、その間に母や夫、子供と一緒に旅行で訪れたことは何度かありました。こうしてお仕事で日本に行けると決まってからは、心配もあったんです。日本の方々が最後に記憶している私の姿は「冬のソナタ」のユジンかもしれないし、ドラマ「輪舞曲-ロンド-」での姿かもしれない。20年ほど前のことなので、今でも私のことを迎えてくれるだろうかと心配だったのですが、実際に来てみると皆さんが本当に優しく、そして温かく迎えてくださったので、とても嬉しかったです。これからも皆さんとお会いできる機会が増えたら嬉しいです。 ■公開情報 「ニューノーマル」 全国公開中 【出演】 チェ・ジウ「冬のソナタ」 イ・ユミ「イカゲーム」 チェ・ミンホ(SHINee)「ザ・ファビュラス」 ピョ・ジフン(Block B)「ホテル・デルーナ」 ハ・ダイン チョン・ドンウォン 【スタッフ】 監督・脚本:チョン・ボムシク「コンジアム」 2023年/韓国/韓国語5.1ch/113分/原題:뉴 노멀(英題:NEW NORMAL)/字幕翻訳:根本理恵 提供:AMGエンタテインメント ストリームメディアコーポレーション/配給:AMGエンタテインメント (C)2023 UNPA STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.
Kstyle編集部