「4年で40%賃上げを」アメリカの自動車ストライキで労働者が立ち上がる理由 隣の彼女の時給は半額…バイデン、トランプ両氏も現地入り【2023アメリカは今】
アメリカ経済を支えてきた大手自動車3社「ビッグスリー」で、大規模ストライキが長期化している。異常な物価高騰もさることながら、全米自動車労働組合(UAW)の要求は「4年で40%の賃上げ」という激しさだ。労働者たちは何に怒り、何を訴えているのか。自動車産業の拠点、ミシガン州デトロイト近郊のスト現場を9月下旬に訪れ、話を聞いた。(共同通信ワシントン支局 金友久美子) ▽自動車労組の新たな戦略「スタンド・アップ・ストライキ」 デトロイトの中心部から車で約30分。肌寒さを感じ始めた9月26日朝、フォード・モーターの工場前を訪れた。ストが始まって既に12日目。300人ほどの従業員らが「ON STRIKE(ただいまスト中)」などと書いたプラカードを手に練り歩いたり、談笑したりしていた。 仲間たちと一緒にいたタメカ・エリスさん(48)に話しかけた。エリスさんはピックアップトラック「レンジャー」製造ラインのロボット管理に携わる。「とてもひどいインフレが起こっているのに賃金が上がらず、家族を養うことが難しくなっている。家族のためにまともな収入を得て、まともな生活を送れるようにしたい」。
赤く染めたロングヘアーに赤いTシャツ姿で、青いプラカードを握りしめる。工場に11年前から勤め、時給は約30ドル(4500円)まで上がったが「ガソリンも上がり、食品も軒並み値上がりしている」と顔をしかめる。 首都ワシントンやニューヨークに比べて物価が安いデトロイトでもラーメンは1杯16ドル程度(2400円程度)。最近の歴史的なインフレが追い打ちをかけており、組合の機関誌では、1週間当たりの食料品の買い物額が新型コロナウイルスの流行前から比べて90ドル(1万3500円)増えた家庭の話も紹介されていた。 UAWは、ビッグスリーとの4年に1度の交渉で、4年間で賃金を40%引き上げることや、給与体系の格差撤廃、インフレを反映した生活費調整制度「COLA」の復活などを要求。一斉ストを行う旧来の「シット・ダウン・ストライキ(座り込むストライキ)」ではなく、まず一部の工場でストに「立ち上がって」、少しずつストを行う工場を増やしていく新戦略「スタンド・アップ・ストライキ(立ち上がるストライキ)」を打ち出した。