2014年は「東アジア文化」元年? デジタルアーカイブ推進の法整備も
文化財のデジタルアーカイブ化
次は、イベントではありませんが、デジタル文化財の整備についての動きです。人類共有の資産である文学や美術、建造物などの学術資料をデジタル化して後世に伝えようという取り組みが今年、国レベルで本格化しそうです。 こうした動きの背景について、太下さんは「いまはメディアの転換期。紙の新聞からネットに移行したり、リアルな本から電子書籍に移行したりする中で、情報の基本がデジタルに移行しつつある過渡期です。ですから文化財などいろいろな情報のデジタル化を進める必要があります。過去の情報がアナログのまま残っていては新しいデータの社会と接続できません」と語ります。 ただ、こうした文化財のデジタル化には膨大な費用がかかります。そのため、国家として取り組むべきだとの声が上がり、それを推進するための法整備の動きが出ています。太下さんは「デジタル化した文化的な情報を国民が活用して、新たな文化産業を生み出して行く循環を作るべきだということで『デジタルアーカイブ振興法(仮称)』という法律が今年できると思う」と語ります。既に超党派の「デジタル文化資産推進議連」という議員連盟ができていて、今年中には議員立法で提案される見通しです。 世界でも積極的に文化的情報のデジタル化に取り組む動きがあり、例えばEUがグーグルに対抗して、フランス中心に巨大なデジタルアーカイブを作りつつあるといいます。太下さんはこう呼びかけます。「日本も文化財のデジタル化に対応していかないと埋没してしまう。そういう意味で、2014年は『デジタルアーカイブ元年』と後々呼ばれることになるかもしれない」。 ■太下義之(おおした・よしゆき) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 芸術・文化政策センター長。 文化経済学会<日本>理事。文化政策学会理事。文化審議会文化政策部会委員、東京芸術文化評議会専門委員。大阪府・大阪市特別参与、沖縄文化活性化・創造発信支援事業評議員、鶴岡市食文化創造都市アドバイザー、公益社団法人企業メセナ協議会監事。文化情報の整備と活用100人委員会委員。著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム発起人など。