なぜ桜前線は「北上」しなくなったのか…桜の開花時期に異変が! 2100年までに起こりうること
「東北地方を中心とした北日本では今から2~3週間開花が早まり、南九州など温暖な地域では1~2週間遅くなるでしょう。関東以西では、今とほぼ変わらない。 その結果、3月25日から4月1日の1週間で東日本から九州北部の広い範囲でいっせいに開花すると予想しています」 80%以上咲けば“満開”だが、バラバラと休眠打破し、バラバラと咲き始めると満開にならない。八丈島など、すでに満開にならない地域も現れているという。 そういえば梅や桃も、桜と同じバラ科。休眠打破をする植物だ。温暖化が進むとうまく休眠打破できなくて、花が咲かず、結果実らなくなってしまう可能性がある。ほかの作物にだって影響は出るだろう。 ◆これからは過去の経験が役立たなくなる時代 桜といえば、関東地方では入学式を彩る花だったが、最近は入学式には散り終わっていることもある。桜前線の北上もなくなる。春の風景が変わりつつあるようだ。 「これからは今までの常識が常識でなくなる時代、過去の経験が役立たなくなる時代です。豪雨がたびたび起こり、堤防を整備する必要に迫られているけれど、何mの堤防を作れば安心か判断をすることができません。経験をもとに考えることは、間違いを引き起こす可能性もあるのです」 インフラも心配だが、去年の酷暑・水不足でお米も大打撃を受けた。漁場も変わってきている。満開の桜が見られなくてさみしいなんて言っているだけではすまないのだ。 「桜の咲き方の変化は、温暖化の影響の象徴。温暖化を招いたのは人間なのですから、これを阻止するのも人間にしかできない。『年々咲くのが早くなるね』と思うだけでなく、次の世代に環境を引き継いでいくためには、どうすればいいか考えてもらえたらうれしい」 伊藤久徳 和歌山大学教育学部助手・助教授、九州大学理学部教授を経て定年退職。専門は気象学。 著書に『オゾンのゆくえ』(共著、クバプロ、’04年)、『気象学と海洋物理学で用いられるデータ解析法』(『気象研究ノート』第221号、’10年)など。’17年から’20年まで福岡市科学館館長を務める。 取材・文:中川いづみ
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