児童が捕獲したアメリカザリガニ、肥料にして有効活用 ホタルの生息域確保へ 福井県福井市
福井県福井市社西地区でホタルが飛び交うまちづくりに取り組む「ほたる社西の会」が、管理しているビオトープ内で、ホタルの幼虫を食べてしまうアメリカザリガニを植物成長剤として農業に利用する取り組みを進めている。殻に含まれる物質の働きを活用するもの。食品化にも着手するなど、ザリガニの有効利用へ意欲的に取り組んでいる。 【写真】汁物やマヨネーズで味付けしたザリガニ 同会は2002年に同市社西小にビオトープを整備した。広さは約千平方メートル。タンクにためた井戸水を三つの池や水田、水路に循環させ、ホタルの幼虫を放流したり、古代米を育てたりしている。 例年、放流と自生のものを合わせ約千匹の幼虫のうち、2割がふ化。今年はホタルの生息域を確保するため、梅雨の時季に雑草を放置するなど対策を講じたが、20匹ほどにとどまった。毎年、生息数を観測している同会の山下征夫会長(79)によると、アメリカザリガニは1年を通してビオトープ内に生息しており、年々数が増えている。ビオトープは地下の排水溝を通じて近くの水田とつながっており、農薬散布などから逃れたザリガニがビオトープに入り込んでいるらしい。 ビオトープでは例年、7月下旬に同校PTAの協力で清掃活動を実施。同時に「ザリガニ釣り」と称し、児童らが200~300匹を捕獲している。ただ、毎年大量のザリガニの処分に頭を悩ませてきた。 そこで、同会会員で元福井工大教授の草桶秀夫さん(72)の助言を受けながら、成長剤への転換に乗り出した。捕獲したザリガニを処理した後、天日干しし、ミキサーにかけて粉末状にする。草桶さんによると殻に含まれるキチンは土壌の微生物に作用し、カビ類など病原菌の殺菌に効果がある。来年、古代米作りで粉末を土に混ぜて使用する。 山下会長は食品化にも意欲的で、10月中旬には泥抜きして臭みを取り、調理を試みた。から揚げやチリソースなどで味付けし、同校教員らと味わった。山下会長は「ザリガニも大切な生き物。輪廻(りんね)転生の考え方で有効活用していきたい」と話している。
福井新聞社