佐野史郎 “冬彦さん”の演技は「かなり真剣にリアルにやろうと。ふざけていたわけじゃない」
俳優の佐野史郎(69)が19日深夜放送のTOKYO FM「TOKYO SPEAKEASY」(月~木曜深夜1・00)に出演。1992年放送のTBS系ドラマ「ずっとあなたが好きだった」で演じた伝説のマザコン夫“冬彦さん”について、同ドラマの脚本家・君塚良一氏(66)とともに語った。 【写真】冬彦が乗っていた木馬と“再会”した佐野史郎 ドラマで佐野は賀来千香子演じるヒロインの夫・桂田冬彦を熱演。脇役だがマザコン夫の怪演は大きな話題を呼び、特異なマザコン男性像は「冬彦さん現象」と言われ一大ブームを呼んだ。この年の流行語に選ばれるほどのブームを巻き起こし、初回13.0%だった視聴率を最終回では34.1%にまで引き上げた。 佐野は「冬彦」を演じるにあたって、それまで会ったことのない同ドラマの貴島誠一郎プロデューサーから突然連絡があったと語った。佐野は、貴島氏は「マザコンの男なんだけど、妻がそれに耐えられず、初恋の男の元に戻る。そういう純愛を成就させるラブストーリーだ。ただ、結婚した奥さんが、気持ち悪いからって男の元に走るのは、倫理的に奥さんに悪いところもある。だから、どう考えても奥さんが悪くないっていう風にしたい」と言い「そうするには、どうしたらいいでしょうか?」と聞いてきたと明かした。 「普通、俳優にオファーしたら、こういう役でこうして、と説得する。初対面なのにどうしたらいいですか?って…何だ、この人は」と思ったものの「よくあるマザコンの男みたいに、カリカチュア(誇張)しすぎないで、リアルにやった方がいいと思います」と答えたという。佐野は「かなり真剣にリアルにやろうと思って。ふざけていたわけじゃない。真剣にやればやるほど、カリカチュアしているように捉えられて…」と語った。 君島氏も「初恋を忘れられない30代男女の純愛物語を書いてくれと言われたんですよ。そこに2人を引き離そうとする悪い夫がいますよ。現代だったらマザコンでしょうね」と言われ脚本を書いたが、1、2話が放送されると、観た人が撮影現場に来ると“冬彦怖い”って逃げてしまうという事象が起きていると聞かされ「何かが起きている」と思ったと振り返っていた。 佐野も、映像デビューの前には唐十郎氏主宰の「状況劇場」に所属していたこともあり「物語のひずみは、唐さんが赤テントでやっていたことと同じだ。連続ドラマでアンダーグラウンド演劇をやってしまおうって強い意志を…」と明かすと、君島氏は「それは僕らはわからないんですよ。前衛的な演劇の手法を持って佐野さんが演じられることに、僕らはずっととまどっていた」と語った。