会社の福利厚生は侮れない!?貯蓄と保険の優遇制度を再度チェックしよう
引き出すのが面倒という“心理的な抵抗感”がお金を残す
このように「会社の制度」というのは収益を上げることを目的としていないため、民間のさまざまな金融サービスに比べてかなりメリットは大きいのです。会社の福利厚生というと、契約保養所の利用とかぐらいにしか目が行かない人も多いかもしれませんが、実際にはこのように幅広くメリットを受けられる制度が存在しています。 そしてこういう社内制度には隠れた大きなメリットがあるのです。それは、やや逆説的になりますが“お金を引き出しづらい”ということです。資産形成をしやすくするための大原則は「預けるときは簡単に、引き出すときは面倒に」です。社内の制度の場合、引き出すに当たっては多くの場合、上司のハンコが必要だったり、手続書類が面倒だったりすることがしばしばあります。こうした心理的に抵抗の大きさがお金を引き出す抑止力となり、意外にお金を残すことができる秘訣なのです。 このように給料といった報酬以外に社員が享受できる利益のことをフリンジ・ベネフィットと言います。昔に比べてこういった福利厚生制度は小さくなったとは言うものの、日本企業にはまだまだ有利な制度は残っています。こうした“社員だからこそ受けられる経済的利益”をうまく活用することによって、老後に向けた資金の準備をする上では大いに助けとなることでしょう。 年度替わりのときなどに会社からこうした「福利厚生事業」を記した冊子などが配布されると思います。会社が契約している保養所一覧だけ見て、あとは放ったらかしというのではなく、会社の制度として有利に利用できるものにはどんなものがあるのかを一度しっかり調べてみてはいかがでしょうか。 (経済コラムニスト・大江英樹) 日本証券アナリスト協会検定会員、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行動経済学会会員。著書に『定年楽園』『その損の9割は避けれる』(三笠書房)『老後貧乏は避けられる』(文化出版局)、最新刊に『はじめての確定拠出年金投資』(東洋経済新報社、6月10日発行)がある。