「どこまでリアルなのか」「相変わらずの大ネタと過去礼賛」…NHK『新プロジェクトX』の開始1ヵ月で早くも見えた「凄さ」と「リスク」
NHKが今春の「切り札」に指名
『新プロジェクトX~挑戦者たち~』(NHK総合)のスタートから1ヵ月が過ぎて番組の傾向が見えてきた。 【一覧】テレビ局「本当は使いたくないタレント」…ワースト1位は意外な大御所…! 中島みゆきの「地上の星」「ヘッドライト・テールライト」と田口トモロヲの語りは不変であり、それだけで18年の時を超えて涙腺が緩んだ人もいただろう。両者の存在は多くの日本人にとって、『情熱大陸』(MBS・TBS系)の葉加瀬太郎・窪田等のコンビと並ぶ“ドキュメンタリーを見るスイッチ”のようなものになっている。 今春、NHKは「切り札、ぞくぞく。」というコピーを掲げたが、『新プロジェクトX』はその中核を担う目玉番組。ただ、番組の構成・演出から、視聴者の印象、時代への対応など、さまざま点で早くも強みと課題が浮上しつつある。
前シリーズから持ち越した課題
2005年12月まで放送された前シリーズは、戦後から高度経済成長期に行われた青函トンネルなどの巨大建設工事、VHSや乗用車などの開発など、さまざまなプロジェクトがピックアップされていた。 一方、『新プロジェクトX』の対象時期はバブル崩壊以降の“失われた時代”。さらに「どんな時代にも必ずいる無名の挑戦者たちにスポットを当て、快挙の物語を見せることで、現代を生き抜くための知恵と勇気を届けよう」というコンセプトが明かされている。 確かに前シリーズは「高度経済成長期の日本人は凄かった」「戦後の日本人はこんなに頑張った」という姿をストレートに見せることで支持を得ていた。しかし、過去の礼賛ばかりで現在と未来に目を向けた構成は少なく、感動を誘いながらも、どこか閉塞感が漂っていたのも事実。実際、番組の終了理由は「過剰演出やねつ造が問題視された」と言われがちだったが、業界内では「過去に向かう発展性のないコンセプトが原因」という見方もされていた。 そして新シリーズでもそれは解消されていない。過去礼賛の繰り返しで「ドキュメンタリーとしての気づきや学びに欠ける」という課題は棚上げにされたままだ。 番組自身、「現代を生き抜くための知恵と勇気を届ける」と掲げているだけに、それが『新プロジェクトX』の“新”に求められているところなのかもしれない。しかし、序盤では「過去から気づきや学びを得て、現在と未来につなげていく」というムードを感じている人はどれだけいるだろうか。