熊本国体から四半世紀…「ひのっこ」は今 出迎え、交通安全に一役…
10月中旬まで佐賀県で行われた国民スポーツ大会(旧国民体育大会)。25年前の1999年には熊本県で第54回国民体育大会が開かれた。当時、大会を陰で支えたのが3体のマスコット「ひのっこ」。くまモンの登場で鳴りを潜めたが、各地で〝余生〟を過ごしていた。 「目が大きくてかわいい。何だろうと、知らない子どもたちは興味津々ですよ」。熊本市西区上熊本の県立総合体育館。正面入り口で来館者を出迎える「ひのっこ」人形の〝健在〟ぶりを井坂文子館長(50)は話した。 「ひのっこ」は、情熱を表した赤色の「ヒックル」、水の申し子「ミックル」、木をあしらった緑色の「モックル」の3体の総称。同体育館は手入れを欠かさず、ほぼ当時のまま。柔らかな表情は月日の流れを感じさせない。 同じ御影石調の台座に載った3体は、八代市の県営八代野球場にもある。関係者によると、十数年前、屋内から屋外の三塁側大扉入り口に移された。「まだ置いているの」と驚く人も時々いるそうだ。元々置かれていた場所には現在、米大リーグ・大谷翔平選手の日本代表レプリカユニホームが飾られている。
3体の勢ぞろいは、上天草市大矢野町維和の桜・花公園や阿蘇市乙姫の子安河原観音公園でも見られる。 上天草市のものは元々、熊本国体の競技会場だった同市の体育館に保管されていたらしい。2007年頃、維和地区のまちづくり団体が引き取った。阿蘇市のものは台座に公園名が記され、国体とは関係なさそうな〝変身〟ぶり。一帯を管理する同観音氏子会は「笑顔に和まされる。大切にしたい」。 人吉市鬼木町では、交通安全に一役買っている。広域農道(通称・フルーティーロード)の横断歩道には、歩行者を見守るように1体ずつ配置されている。ミックルは黄色に塗り直されて存在感を放ち、通行車両に注意を促している。 一方、悲しい運命をたどる「ひのっこ」も。フェリーの乗降客でにぎわう長洲港(長洲町)の片隅には、ミックルとモックルが横倒しされている。近くの看板の裏にはヒックルがひっそりと置かれ、赤色だった体は茶褐色にあせている。同町によると、国体のPRのため台座ごと複数購入したうちの一つ。大会後、管理されなくなったという。
「ひのっこ」はほかに、県の施設などでも保管されているようだ。県民挙げての一大イベントから四半世紀。各地で探してみて、ちょっぴり当時に思いを巡らせるのはいかが。(地方都市圏担当取材班)