インタビューを受ける佐野正幸

　劇団四季のミュージカル「ジーザス・クライスト＝スーパースター」（JCS）が11月、静岡県内各地で上演される。9月の福岡公演で司祭役を務めた藤枝市出身の佐野正幸に、1987年にデビュー作として出演した同作の見どころや劇団四季に入団するまでの経緯を聞いた。 　－JCSの魅力は。 　「アンドリュー・ロイド・ウェバーが活動初期の20代前半に作曲した作品で、これを原点に後の『キャッツ』などにつながっていくのだと感じることができる音楽を楽しめる。劇団四季のJCSは昔で言えばドラマチックとエキゾチックの2バージョン、今はエルサレムとジャポネスクの二つがある。音楽と台本は一緒だが衣装や舞台装置、メークが違う。静岡公演はエルサレムバージョンで、一言で言うとリアル。浅利慶太先生の演出の筆頭と言われているもの。小道具はほとんどなく、舞台も頭から最後まで荒野をイメージした“1枚”。シンプルな中で全てを表現することが、この作品が持つ力だと思う」

エルサレムの荒野を舞台にイエス・キリスト最後の7日間を描く「ジーザス・クライスト＝スーパースター」

　－86年に劇団四季に入団し、JCSで初舞台を踏んだ。 　「オーディションから半年後にペテロ役に選ばれた。ペテロはジーザスの弟子、十二使徒の一人だが、最終的にはジーザスを裏切って逃げてしまう。ジーザスの十字架刑の後には後悔して全世界の布教に当たっていく。相当重要な役回りだが、浅利先生にいきなりやれと言われた。右も左も全く分からないまま周り全員が先輩という、今思うととんでもない状況だった」 　－司祭役を演じた感想は。 　「ここ何十年もJCSに関わっていなかった中で、ペテロとは逆の方向性でジーザスと敵対する司祭を初めて演じた。本役とは別に群衆としても出演するが、2役はペテロを演じた時と同じ。30数年前の記憶がよみがえってくる。自分にとっても原点だし、劇団四季にとっても子ども向けではないミュージカルをやるという原点の一つ。劇団もずいぶん大きくなったが、劇団四季の精神は変わってないことを改めて今作に関わることで思えた」 　－舞台俳優を志したのは。 　「藤枝市立西益津中コーラス部がルーツ。合唱に力を入れる学校で、部活動もコンクールを目指す本気さがあった。元々は体が弱く運動ができないという理由で入部したが卒業まで続け、藤枝東高を経て東京芸術大声楽科に進んだ。大学ではオペラを勉強する一方で、中高の教職課程も取った。卒業後は音楽教諭になることも考えたが、職業として舞台に立ちたいという思いが勝り、コンスタントに公演を行っていた劇団四季に飛び込んだ」

キリスト最後の7日間描く　11月静岡県内公演

　劇団四季ミュージカル「ジーザス・クライスト＝スーパースター」はイエス・キリストが十字架刑に処せられるまでの最後の7日間を描く。10年ぶりの静岡ロングラン公演を終えた「キャッツ」と同じアンドリュー・ロイド・ウェバー作曲のロック・オペラ。エルサレムの荒野を模した極めてシンプルな舞台上で、愛憎入り交じるリアルな人間模様を表現する。 　県内公演（静岡新聞社・静岡放送など主催）は11月11日にアクトシティ浜松、13～15日に静岡市民文化会館、17日に沼津市民文化センターで。このほか9日に富士市公演がある。問い合わせは劇団四季ナビダイヤル＜電0570（008）110＞へ。