テニスの望月慎太郎がジュニアの世界ランキング1位になった秘密とは?
ウィンブルドン・ジュニアの部で、日本男子初優勝――。新たな歴史を切り開いた望月慎太郎だが、彼は周囲が「快挙」と賞賛するその結果をも、ことさら大仰にとらえることを好まないようだった。 元日本テニス協会会長であり、ソニー・アメリカCEO等を歴任した盛田正明氏設立の“盛田正明テニスファンド(以下MMTF)”の支援を受け、13歳でフロリダのIMGアカデミーに留学。世界中からテニスエリートが集まる地で、最新鋭の指導を受ける16歳の少年は、いかにして、どのような思いを抱え“ジュニア世界ランキング1位”に至ったのだろうか?
“虎の穴”IMGアカデミーでの教育
6月の全仏オープンジュニアで、初のグランドスラムジュニア出場にしてベスト4に勝ち上がった時、望月は、ある種の戸惑いを見せていたという。 「思っていたよりも、上に行けた……」 それは喜びであると同時に、自分の立ち位置を把握しきれぬことへの、微かな不安でもあっただろう。 ただそのような感情の揺らぎは、IMGアカデミーで数々のトップ選手を指導してきた中村豊トレーナーの目から見れば、躍進の時を迎える選手の多くが覚える、ひとつの通過儀礼だ。だから中村は、望月の背を押した。 「それだけの実力は備えている。気にせず、行けるところまで行け!」……と。 IMGアカデミーで望月は、常時4人のスタッフの指導を受けている。ディレクター的な役割を果たすのは、MMTFの派遣コーチである山中夏雄。そこに、IMGアカデミーのコーチ、フィジオセラピスト、そしてフィジカルコンディショニング部門のヘッドトレーナーである中村が加わる。さらには必要に応じて、専門家によるビジョントレーニング、栄養学、メンタルトレーニングの指導も受けることが可能だ。しかもIMGアカデミーには、テニス以外にも陸上やアメリカンフットボール、バスケットボールなど多くの競技のエリートたちが集まる。それらの豊富なデータベースを活用し、複数の競技の動きを取り入れる“クロストレーニング”が盛んなのも、IMGの利点だと言えるだろう。 「単なるテニス選手ではなく、アスリートを育てる」 それが、中村の指導哲学でもある。 中村が望月の能力で何より高く評価するのは、テニスのみならず、球技全般に見せる適性だ。ボールへの集中力が高く、球際に強い。アメリカンフットのボールを投げさせても、身体を竹のようにしならせ、きれいなスパイラル回転のかかったボールを投げていた。だから、サーブはまだまだ上達するポテンシャルがあると、中村は目している。