土壌微生物の特性生かし農業現場で発電 四国電力、東京農工大がみかん園地で実証
四国電力と東京農工大が連携し、土壌内の微生物を利用した燃料電池の実証実験を進めている。「発電菌」と呼ばれる微生物が有機物を分解する際に電子を放出する性質を生かした。電源のない場所でも半永久的かつ安価に発電できる可能性がある。農業現場で使われるセンサーなどの電源としての活用を目指し、季節や天候が発電量に与える影響を調べる。(共同通信=山口裕太郎) 発電菌は、田畑などあらゆる土壌に生息しており、ジオバクター菌やシュワネラ菌などがある。実証は愛媛県八幡浜市、伊方町の二つのミカン園地で2025年3月まで行う。電池は、高さ約7センチの箱に園地の土を詰めて電極を挿入し発電させる仕組み。発電量は少なく、十分な量が集まるまで蓄電して使う。 9月上旬、東京農工大の松村圭祐(まつむら・けいすけ)特任助教(電気化学)らが、強い日差しが照りつける中、急傾斜が特徴的な八幡浜市の園地を訪れた。深さ約30センチの穴を掘って12箱分の電池を置き、上から土をかけて設置を完了。伊方町の園地でも同様に12箱分を置いた。
松村氏は「場所を問わず設置でき、定期交換の必要がない。太陽光発電や乾電池に代わる電力になり得る」と新しい燃料電池の特長を説明する。 さらに園地の様子を撮影するカメラや温度を計測するセンサーなどの電力に使用できれば「見回りなど農家の負担を軽減しつつ、営農に関わるデータを詳細に把握してスマート農業に生かせる」と強調。「例えば地中の水分量のデータは地滑りの危険度を測る指数にもなる」とも話し、防災分野への応用も期待する。 地中の微生物が電子を放出することは約100年前から知られていたが、電力が小さく実用化に向けた動きは進んでいなかったという。「発電のメカニズムを研究する農学と、電力を最大限に生かす工学が融合したこの実証を経て、実際に使える技術だと証明していきたい」と意気込む。 四国電力の三島宏之(みしま・ひろゆき)新規事業部長は「電池の仕組みはシンプルで、将来的に安価に提供できる可能性がある。耕作放棄地の増加や農家のなり手不足など、地域課題の解決のために活用していきたい」と話している。