【米大統領選2024】 マスク氏を検察が民事提訴、激戦州有権者への100万ドル贈与めぐり
世界一の富豪のイーロン・マスク氏が米大統領選挙の激戦州で毎日1人の米登録有権者に100万ドル(約1億5000万円)を贈っていることについて、ペンシルヴェニア州フィラデルフィアの検察は28日、マスク氏が「違法な宝くじを運営している」とし、活動の中止を求める民事訴訟を起こした。 フィラデルフィア地区検察局のローレンス・クラズナー地方検事は、「(マスク氏の政治活動委員会の)アメリカPACとマスクを直ちに止めなくてはならない。11月5日の大統領選挙が迫っている」と訴状で主張している。 アメリカPACに対しては、司法省が先日、連邦選挙法違法の疑いがあるとする警告文書を送っていた。 マスク氏は今回の大統領選で、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領を精力的に支持している。その活動の一部として、ペンシルヴェニア、ジョージア、ネヴァダ、アリゾナ、ミシガン、ウィスコンシン、ノースカロライナの激戦7州の中から11月5日の投票日まで毎日1人に、100万ドルを贈ると発表している。 受け取りを望む人は、共和党員として有権者登録する必要も、投票する必要もないとされている。ただ、住所や電話番号などの個人情報を提供する必要がある。また、憲法支持するという誓約書の署名も条件となっている。 これまでに9人が、100万ドルの受け取り人として発表されている。最新の「当選者」はミシガン州の男性。 トランプ候補と、民主党候補のカマラ・ハリス副大統領が争っている大統領選は、激戦州で接戦状態が続いている。 マスク氏の活動に対しては、票を買収しようとするものだとの非難が民主党側から出ている。法的に問題だとして調べる動きもある。 ■「違法な宝くじ」と検察 フィラデルフィアのクラズナー地方検事は訴状で、「アメリカPACとマスクは、フィラデルフィアの市民を誘い(中略)100万ドル獲得のチャンスと引き換えに、個人情報を提供し、政治的な誓約を立てるよう仕向けている」、「これは宝くじだ。紛れもなく違法な宝くじだ」と主張している。 また、「人を欺き、あいまいで、あるいは誤解を招く」種類の、混乱を引き起こしかねない声明を用いることで、マスク氏が消費者保護法に違反しているとしている。 クラズナー地方検事はさらに、この「たくらみ」は「有権者に影響を与える」のが狙いだとし、大統領選の投票前にやめさせるよう求めている。 フィラデルフィアの裁判所は、投票日直前の来月1日午前に審理を開く予定。 検察は訴状で、今回の提訴はマスク氏やアメリカPACを、票の買収を禁止する連邦法違反に問うものではないと強調している。 アメリカPACの代理人は提訴後、100万ドルの小切手を自分たちが今後も提供し続けると「推論」するのは、妥当な判断だと、米ABCニュースに話した。 BBCはアメリカPACにコメントを求めている。 法律の専門家らは、この金銭提供が連邦法に違反するのかはややグレーだとBBCに話した。 連邦法では、有権者登録をさせるために金銭を支払うことは違法とされる。しかし、今回の宝くじ方式の金銭提供が違法かどうかは、まだはっきりしない。 (英語記事 Philadelphia prosecutor sues Musk over $1m swing-states voter lottery)
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