【高齢者雇用拡大】地域全体で態勢構築を(2月7日)
生産年齢人口が少子化によって減少すれば、国の産業力の低下を招く。高齢者を労働力として取り込む必要性が高まっている中、法令で努力義務とされる70歳までの就業機会を確保している県内企業は3割にとどまり、受け皿が充実しているとは言い難い状況にある。民間に雇用拡大の努力を求めるだけでなく、働く意欲のある人材が活躍できる枠組みを地域全体で構築すべきだ。 福島労働局が公表した昨年の高齢者雇用状況に関する県内調査(対象3596社)では、70歳までの就業確保措置を講じている県内企業は34・4%だった。一方、65歳以上の昨年12月の新規求職申し込みは県内で779件に上り、前年同月を96件上回った。就職率は17・5%で、年齢別で最も高い20~24歳の41・8%を24・3ポイント下回った。同局職業安定部は「最近の物価高の影響で職を求める年金生活者が増えているが、企業側は若い世代を求める傾向がある」とみている。
高齢者にとって就業は狭き門で、在職時に身に付けた技術、知識を有効に生かし切れていない現状が浮かぶ。改善するには、求人・求職を結ぶ仲介組織が地域に必要ではないか。求職側の人柄や技能、経験をまずきめ細かく把握して求人側につなぐ。短時間労働や、平日もしくは週末のみの出勤など双方の要望を擦り合わせて柔軟な勤務態勢を実現できれば、人手不足が深刻化する中で産業活性化の一助にもなる。 厚生労働省は、高齢者雇用の拡充を目指す地域の関係団体の活動を後押しする「生涯現役地域づくり環境整備事業」を展開している。市町村、経済団体、シルバー人材センターなどでつくる組織による55歳以上の各種就労支援策が対象で、採択されれば初年度は1団体当たり1750万円を上限に事業委託費を交付する。全国で10団体が採択されており、福島労働局は県内市町村に制度の説明を続けている。他県の実施例を参考に、地域の実態に応じたメニューを練り上げ、応募を検討してみるのも一案だろう。
本県の15歳から64歳までの生産年齢人口は、今後20年間で3割減少する推計が発表された。働く年齢層を官民一体で広げる取り組みは待ったなしと言える。(菅野龍太)