「名ばかりな種別表示」は過去の優等列車の名残 ことでん琴平線を走った幻の「準急」
高松琴平電気鉄道(以下、「ことでん」)の電車を見ると、一部の車両には「普通」という種別表示が入っていることがわかります。現在、ことでんは、各路線ともすべての列車が普通列車(各駅停車)で運転されています。 【上下各2本】ことでん琴平線、準急最末期の時刻表 「普通列車しか走っていないのに、なぜわざわざ種別を表示するのか?」 と気になった人もいるかもしれません。 ことでんの種別表示、いまとなっては名ばかりになってしまいましたが、昔は本当に優等種別が走っていました。「普通」の表示は、当時の名残と考えられます。 優等種別の歴史は意外と古く、1958年には「こんぴら号」など、急行が定期列車として走っていました。1967年に急行は廃止となりますが、その後、新たに「準急」が設定されます。これが、1991年に廃止されるまでの間、琴平線の優等種別として君臨していました。 準急の停車駅は、高松築港~岡本間の各駅と、滝宮駅、琴電琴平駅。岡本駅を境に停車駅をズバッと割り切るような形態でした。1987年(準急最末期)改正のことでんの時刻表を見ると、準急は上下2本ずつあることがわかります。当時の琴平線の運転形態は現在のそれと似ており、高松築港~一宮(朝夕は滝宮)間は15分間隔、それ以外は30分間隔が基本でした。準急は、一宮駅(または滝宮駅)までの区間列車を琴電琴平駅まで延長するかたちで設定されていたようです。高松築港~琴電琴平間を約55分で結ぶ準急は、普通列車に対して10分程度、所要時間を短縮していました。 1991年の準急廃止後、ことでんは普通列車のみの運転となっています。優等列車の復活について、現在も利用者から要望が寄せられることもあるようですが、こうした声に対してことでんは、「準急の廃止後に行き違い設備などを変更したため、現在の施設で準急を走らせることはできない」と回答しています。残念ながら、ことでんの優等列車復活は、現時点では望みが薄いといえるでしょう。なお、「準急」の表示は、現在も1080形、1200形、1300形(いずれも元・京急の車両)の表字幕に収録されています。
井上拓己