『アストロボット』レビュー。探索からアクションまで細部にわたって“遊び心”が満載。ずっとアストロを操作していたくなる、遊び心地がたまらない!
2024年9月6日、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)より発売となる『アストロボット』。 【記事の画像(28枚)を見る】 2012年に設立され、PlayStation Studiosの一員として東京を拠点に活動している開発スタジオ“Team ASOBI”が手掛ける本作は、プレイステーション5(PS5)にプリインストールされている3Dアクション『ASTRO's PLAYROOM』をベースに、新たにフルサイズのゲームとして開発されたタイトル。ハードやDualSenseワイヤレスコントローラーの機能をフル活用し、PS5の魅力を存分に堪能できる内容となっている。 ゲームの主役を務めるアストロは、PS VR専用タイトルの『ASTRO BOT:RESCUE MISSION 』や、前作『ASTRO's PLAYROOM 』でもおなじみのキャラクター。彼を操作して、散り散りになってしまった仲間の“ボット”たちを救出しながら、6つの銀河と80以上のステージで冒険をくり広げていく。 本稿では、記事担当ライター・ジャイアント黒田によるレビューを公開。また、ネタバレには配慮しているが、ゲームの魅力を語るうえでやむなくネタバレになることにも触れている。気になる方はプレイ後にチェックしてほしい。なお今回はSIEより製品コードの提供を受けることができたため、それを用いてプレイを行っている。 ステージには冒険心を刺激する仕掛けが満載なうえにサポートもバッチリ プレイして改めて驚かされたのが、ハプティックフィードバックによるリアルな感触表現。前作からますます進化しており、草むらや砂利道、鉄板などの異なる地面、水の感触を伝えてくれるほか、 敵を攻撃したときの衝撃もダイナミックに再現してくれる。 地面の状態によってハプティックフィードバックが再現する感触が変化するので、あちこち歩き回るだけでも数々の驚きと発見があった。とくに印象に残っているステージは、“ミニでビッグな冒険チュー”。民家の庭と室内が舞台となっているのだが、このステージでは装備したガジェットの能力で、アストロの体がネズミのように小さくなる。 アストロの体のサイズが変わると、同じ場所を歩いたときも、ハプティックフィードバックが再現する感触や、内蔵スピーカーから聞こえてくる足音が変化。感触やサウンドの違いを見つける楽しさに小さな姿で冒険できる興奮が加わり、“ミニでビッグな冒険チュー”のステージは、5回以上プレイしてすみずみまで駆け回った。 ネズミのサイズだからこそ冒険できる場所が、ステージのいたるところに用意されているのも楽しい。このステージに限った話ではないが、「ここには何があるんだろう」と、気になった場所にはコインやボットなど、何らかの“うれしい発見”がきちんと用意されており、探求心や好奇心をしっかりと満たしてくれる。 元のサイズでは入れないところも、ネズミサイズになれば探索可能。サイズが変わるとステージの印象がガラリと変化し、ふだんのステージの倍以上は堪能したと思う。 ステージに配置された、ボットやパズルピースなど収集物の隠し場所も絶妙だ。見つけやすいものと発見しにくいものがバランスよく配置されているうえ、クリアー済みのステージではコインを200枚支払うことで、収集物に近づくと教えてくれる鳥のお助けキャラクターを仲間にできる。このサポート機能のおかげで、収集物のコンプリートを目指しやすいのもユーザーライクだと感じた。 スタート地点で鳥のキャラクターを仲間にすると、取り逃したアイテムが近くにあるとき、鳴き声やアンテナの光で教えてくれる。 さらに、ボット自体にも見つけたくなる仕掛けがある。本作はPSの30周年を祝う作品にもなっており、ボットの中にはクレイトスやラチェット、パラッパなどといった、PSの歴代タイトルの人気キャラクターに扮した特別な“VIPボット”たちの姿も。その数は、なんと総勢150体以上! ソニー・インタラクティブエンタテインメントのタイトルだけではなく、他社の人気タイトルのキャラクターをモチーフにしたVIPボットも多数存在し、集めるのがとにかく楽しい。とくに、プレイしたことのある思い出のタイトルに登場したVIPボットと出会えたときの感動はひとしおだった。 とあるステージでは、筆者のイチオシタイトル『The Last of Us』のエリーやジョエルに扮したVIPボットに遭遇! 最後のVIPボットはどのキャラクターだろうとワクワクしていたら、まさかの感染者(作品に登場するゾンビのような敵)で、いい意味でビックリ(笑)。 アクションは初心者から上級者まで堪能できる丁寧な作り。アストロの動きにも注目! アストロはキュートな見た目に反してアクションが得意。パンチ、 ジャンプといった多彩なアクションを駆使して、広大な銀河で冒険をくり広げていく。 ジャンプアクションゲームとしての楽しさは、 定評あるTeam ASOBIが手掛けるだけにさすがのひと言。ジャンプやパワーアップを駆使して仕掛けが満載のステージを攻略していくのだが、多彩なステージが用意されているうえ、たとえミスしてもすぐに何度でもリスタートできるのはありがたい。ハードに搭載された高速SSDの読み込みの速さも相まって、クリアーできるまで何度も挑戦してしまう。 アクションゲームの初心者でも遊びやすい親切な作りにも関わらず、歯応えのあるステージも用意されており、アクションゲーム好きも満足できる内容になっている。アストロが冒険をくり広げる惑星(プラネット)には、 前作の敵だけではなく、初登場となる新しいタイプの敵が70種類以上も生息しているので、シリーズファンも新鮮な気持ちで遊びやすい。 敵の中には、アストロの冒険をサポートしてくれるものも。たとえば、テントウムシのような敵を攻撃してひっくり返すと、トランポリンとして利用可能。アストロがいつもより高くジャンプできる。 新種の敵もバラエティー豊か。パンチで簡単に倒せる敵もいれば、ときどき体からトゲを出してくる敵や、触れるとビリビリ感電してミスになってしまう敵など、キケンな敵も。さらに、巨大なボスも多数登場し、ボス戦ではアストロのパワーアップ能力やアクションを駆使して戦う白熱のバトルが堪能できる。 最初のボスは、巨大なゴリラのマイティー・チューイ。 マイティー・チューイ戦では、ブルドッグがブースターになる“ブルドッグブースター”によるパワーアップが大活躍。エアダッシュの体当たりを使ってボスにダメージを与えられる。 こうしたパワーアップは、ボス戦だけではなく通常のステージを攻略するうえでも重宝する。これまでに紹介したパワーアップのほかにも、両手からくり出す長距離パンチが強力なツインフロッググローブや、長い手を使って急斜面や崖などを登ることができるモンキー・クライマー、周囲の空気を取り込むことでアストロの体がふくらみ、風船のように浮遊できるポンペックスなど、能力はもちろん、見た目もユニークなパワーアップが多数登場する。 モンキー・クライマーのパワーアップを駆使し、巨大な敵の体をよじ登って攻撃するステージ。激アツ。 パワーアップは全15種類と多彩で、アストロのパンチやジャンプといったアクションを強化してくれるうえ、そのパワーアップならではのアクションが使えるのも楽しい。ちなみに、筆者のお気に入りはツインフロッググローブ。伸びる手を振り子のように使い、遠距離ジャンプを行いながら足場のない場所を飛んでいくのが爽快だった。 プレイする際は、アストロの動きにも注目を! 筆者はひさしぶりにアストロと再会して、1歳になる姪っ子のことを思い出した。ハイハイで動き回る姪っ子の一挙一動から目が離せなくなり、泣いても笑っても、思わず笑みがこぼれてしまう。 アストロを操作していて、姪っ子を見守っているかのような、温かい気持ちになった。その理由は、アストロの振る舞いがとにかく愛らしいから。アストロにいろいろなアクションをさせてみて、その豊かな表情と、DualSenseワイヤレスコントローラーがもたらすさまざまな体感、サウンドの相乗効果により、時間を忘れて熱中した。 アストロを放置したときも見逃し厳禁! 放置してしばらくすると自動的に動き出し、多彩なアクションを披露してくれる。見覚えのあるゲームハードが登場することも。 とくに、パワーアップを装備したときのアクションと、ボットを救出するときのやり取りは、何度遊んでも飽きることなく、思わず微笑まずにはいられなくなる。アストロを放置したときに見せてくれる、パワーアップ装備のブルドッグなどとの仲睦まじいやり取りも微笑ましい。パワーアップごとにまったく違うやり取りがあるのを発見したときは、丁寧な作り込みに感動したほど! 探索のモチベーションを高めてくれるボリューム満点のやり込み要素 ボットやパズルピースを探したくなる理由は先述した通り。これらを収集することで、アストロベースキャンプが賑やかになっていくのも、探索のモチベーションをますます高めてくれた。 アストロベースキャンプは、その名の通り、アストロやボットたちの拠点となる場所。救助したボットやVIPボットたちがくつろいでいるほか、パズルピースを集めて新たな施設を開放したり、パーツを回収してアストロたちの母船であるPS5を修復したりできる。 ボットを救出していくと、ベースキャンプはどんどん賑やかに! 利用できる施設は、コインでアイテムを入するガチャラボや、アストロの見た目を変えるフィッティングルーム、乗り物の見た目を変えるペイントガレージなど。ガチャラボでは、フィッティングルームとペイントガレージで使えるコスチュームやカラーリングのほかに、VIPボットの固有アイテムも存在。固有アイテムを入手すると、VIPボットがモチーフとなった名作ゲームにちなんだ、特別なアクションを披露してくれるのだ。 さらに、アストロベースキャンプにも探索要素が用意されており、ストーリーの進行や助けたボットの数に応じて行動できるエリアが広がっていくのもおもしろい。新たに訪れた場所でボットやパズルピースを発見する楽しみも、アストロベースキャンプを拡張し、探索するやる気を高めてくれた。 アストロベースキャンプにある遺跡のような場所には、ストーリーを進めたうえで、ボットを60体以上救出していると行くことができる。 ここから先はとくにネタバレ注意! 最後に、PSのファンにはたまらないステージについて紹介したい。これは、さまざまなお楽しみ要素の中でもとくに特別で、開発者たちが驚くほどの熱意と愛情を込めて制作したのであろうことがひしひしと伝わってくる要素だ。もしも、本作を購入してプレイすることを決心しているのであれば、ここから先は読まずに、ぜひ自分の手でゲームを進めて、驚き、楽しんでほしい。 ……と警告をしたうえで。本作を購入する最後の後押しがほしい! という人のためにご紹介しよう。本作では、各銀河のボスを倒してVIPボットを救出すると、そのVIPボットの作品やシリーズをテーマにした特別なステージが出現する。これらのステージでは、VIPボットに変身し、キャラクターにちなんだ特別なアクションを駆使しながらステージを攻略できるのだ。特別なステージはいくつか用意されているが、筆者がとくに胸熱だったのは『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズを模した、その名も“ボット・オブ・ウォー”。 ボット・オブ・ウォーのステージには、クレイトスに扮したVIPボットが登場。 ボット・オブ・ウォーでは、クレイトスのVIPボットに変身したアストロが、戦斧“リヴァイアサン”を手に大暴れ! リヴァイアサンを使った豪快なアクションを堪能できる。リヴァイアサンを投げたり、手に戻したりするアクションもバッチリ再現。ステージの探索も、『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズを遊んだことのある人なら、ニヤリとするような仕掛けがたっぷり用意されているので、ファンの方はお楽しみに! 本作は、探索、アクション、やり込み要素のすべてに、Team ASOBIが大切にしている“遊び心”が盛り込まれており、プレイするたびに新たな驚きと発見が得られるタイトルに仕上がっていると感じた。筆者が覚えた感動を、ぜひ体験してほしい。