富士山麓にようやく春 狩宿の下馬桜が満開に
国の特別天然記念物にもなっている富士宮市狩宿の下馬桜がようやく満開となり、周囲の鮮やかな黄色の菜の花とあいまって富士山麓に春の訪れを告げている。例年4月中旬頃に満開になるとのことだが、昨年は4月10日に満開となっており、今年はやや遅い春の訪れ。
富士山麓ではかつて、狩猟によって武術を訓練する巻狩(まきがり)が行われたとされ、鎌倉幕府が編纂した歴史書、吾妻鏡には源頼朝が建久4(1193)年に富士山麓で大規模な卷狩を行ったことが記されている。富士宮市狩宿は、その際、陣屋を設けた場所と伝えられ、下馬桜は、源頼朝が馬からおり、枝に馬をつないだ桜だと言われている。そのため駒止めの桜とも呼ばれている。 赤芽のシロヤマザクラで、富士宮市観光課によれば、国内最古、樹齢800年以上と言われている。井出家の敷地内にあるが、開放されていて、だれでも訪れて見ることができる。
井出家は、鎌倉時代、地域の実力者であった井出氏の末裔で、源頼朝は巻狩の際、同氏の館である井出館を宿にしたとされる。富士宮市郷土資料館の渡井一信館長によれば、井出家には今川義元からの朱印状や武田氏の家臣からの古文書が残されているという。 下馬桜は、井出家の高麗門の前の敷地の一角にあり、かつては幹の外周が8・5メートル、東西に22メートル、南北に16メートルの枝が張る巨木であった。しかし、台風や雷などにより幹が折れるなどして一時期、樹勢が衰えて危ぶまれたが、現在は回復しつつあるという。
今年は4月に入っても気温が上がらず、4月8、9日には恒例の狩宿さくらまつりが催され日本舞踊の公演などが行われて賑わいもみせたが、桜の方はまだツボミのままで開花すらしていない状態だった。その後、陽気が回復したこともあり4月16日の日曜日にはほぼ満開までに開花し、富士山も顔をのぞかせた。訪れた人たちは下馬桜を観賞しつつ富士山麓の春を満喫している様子だった。 富士宮市観光課によると、満開となった下馬桜だが、17日夜から18日未明にかけての強い雨と風で花がかなり落ちてしまったとのこと。ただ、桜自体はもうしばらくは楽しめそうだという。