日本農業賞集団組織の部 かすみ草部会(福島県昭和村)大賞 JA会津よつば 就農者育成と将来性評価
全国農業協同組合中央会(JA全中)などが主催する第53回日本農業賞の集団組織の部で、福島県昭和村のJA会津よつばかすみ草部会が最高賞の大賞に輝いた。本県からの同部門大賞は2015(平成27)年の南郷トマト生産組合(南会津郡)に次いで4例目。厳しい自然環境の中で一大産地をつくり上げたことや、新規就農者の育成による高い将来性などが評価された。JA全中などが29日、発表した。表彰式は3月9日、東京都で行われる。 JA会津よつばかすみ草部会が販売しているカスミソウのブランド「昭和かすみ草」は葉タバコに変わる新たな産業として、1985(昭和60)年ごろから昭和村で生産が始まった。一帯は特別豪雪地帯で、栽培可能な作物が限られる中、生産者は冷涼な環境を好むカスミソウに着目した。標高200~700メートルに広がる耕地を生かし、季節に合わせて収穫地を移動。6月から11月までの長期にわたる安定出荷を実現した。
さらに、地域特性を生かした集出荷施設「雪室」は鮮度保持に優れており、夏秋の高温期でも品質が良いカスミソウとして市場に浸透している。2023(令和5)年度の生産本数は532万本、販売額は6億4795万円となり、ともに過去最高を更新した。昨年は地理的表示(GI)保護制度の登録を受け、関係者が一層のブランド力向上に努めている。 官民連携による新規就農者の育成も進む。行政が移住者の補助事業などの制度を整え、JA会津よつばがハウスの手配や耕地の引き継ぎ、部会が研修や日常的な指導に当たるなど、若い世代が安心して参入できる仕組みを構築した。新規就農者は現在、全就農者の3分の1を占める。部会の平均年齢は50代と農業分野では比較的若い。部会は昭和村、柳津町、三島町、金山町の生産者で構成している。このうち最も生産者が多い昭和村の人口動態は社会増の転入超過となっており、地域振興・活性化にも大きく寄与している。
日本農業賞はJA全中、NHK、都道府県農業協同組合中央会の主催。日本農業の確立を目指し、意欲的に経営や技術の改善、地域社会の発展に取り組む個人・団体を表彰している。大賞受賞は国内農業のトップランナーの証で、今後の生産本数や販売額の増加が期待される。 JA会津よつばの原喜代志組合長は「先人が築き上げてきた産地を今の生産者が守り続け、地域起こしの一つになっている。厳しい自然環境に負けずに努力してきた成果が評価され、大変な栄誉だ」と喜びを語った。