教員は忙殺されている? 「教室が今、SOS!」ポスターが訴える教職の現場
文部科学省が新学習指導要領を今春公示し、小学校では平成32(2020)年4月から、中学校では平成33(2021)年4月から新しい学習指導要領が実施される。小中学校ではすでに新学習指導要領に向けた取り組みが始まっているが、こうした中、静岡県教育委員会では「教室が今、SOS!」と訴えるポスターを制作した。ポスターにはどのような意図があるのだろうか?
ポスターはJR静岡駅近く、多くの人が行き交う地下街の通路に掲げられた。「教室が今、SOS!」との文字が大きく描かれている。やや学園ドラマのPR風だが、静岡県教委はこのポスターを静岡駅近くの通路に1カ月間、掲示したほか、県内の公立小中学校、県立高校、特別支援学校に配布をして2学期以降、校内に掲示をする予定だという。 学校や教室をめぐるSOSといえば、いじめや不登校、学級崩壊など様々な問題が今もなお発せられているわけだが、このポスターで発しているSOSは、そうした問題とは少し異なるようだ。「先生たちだけが忙しいのではない、との世間の声があることはよく承知している」と前置きした上で、静岡県教委義務教育課教育主幹の藤原誠氏は説明する。 「不登校の問題、保護者間のトラブル、ネットをめぐるトラブル……。これまでなかった様々な問題やトラブルに教員は追われています。そのうえ、防災教育やICT教育、人権教育など担うことがどんどん増えていて、本来の教科指導や生徒指導、学校経営にかける時間が十分にとれず、子供たちとしっかり向き合うことができなくなっています」。 特に携帯電話の普及により、保護者や地域の人たちが、教員や学校に電話をする機会が増え、さまざまな相談を持ち込むようになったという。「筆箱を忘れて学校に行ったが、子供はちゃんと勉強していたか?」「子供が泥だらけで帰宅した。学校で何かあったのではないか?」「地域の行事に子供たちに参加してもらいたい」 ── 。さまざまな相談や要望が持ち込まれ、真面目な教員は本来の業務に加え、持ち込まれる問題に応えようと時間を割き、その結果、どんどん忙しくなっているという。 静岡県教委ではこうした状況に対して、昨年度から「未来の学校『夢』プロジェクト」と名付けた教員の職場環境改善プロジェクトを3カ年計画で立ち上げ、県内4小中学校をモデル校に指定して学校の職場改善のための取り組みを始めた。