〈過去最高の介護保険料は悪いこと?〉「目立つ地域差」も、高額自治体に取材してわかった深い理由
低所得者の多さも要因だが、注目すべき足立区の動き
もう一つの理由、低所得者が多いことが保険料の上昇につながるのは、どうしてか。 保険者の基礎自治体は、この先3年間の第9期の総サービス費用を想定し、65歳以上の人が負担する23%分を算出後に65歳以上の人口で割って基準保険料を決める。その基準額を基に所得に応じて倍率を作り、一人ひとりの金額を導く。 低所得者には基準額から0.9や0.2などのマイナス倍率とし、逆に一定以上の所得者は倍率を所得に応じて1.5や2.5などと上げていき、全体として10数段階の保険料を決める。段階ごとの倍率は自治体が自由に決めるので、同じ所得でも自治体によって保険料は異なる。 厚生労働省は標準保険料として従来の9段階を13段階に広げるよう今回自治体に示した。所得に応じての保険料、すなわち応能負担の考え方をより強化する狙いだ。 これまでは所得320万円以上を最高の第9段階とし、基準額への倍率は1.7倍だったが、これからは所得720万円以上を第13段階とし、倍率を2.4倍に引き上げた。だが、すでに全国の半数の自治体は9段階以上の多段階を設けている。 低所得者が多い自治体は、1.0の基準額以下の人が多くなるため、1.0以上の高齢者からより多くの保険料を徴収しなければならない。そのため、保険料の上昇を迫られる。
大阪市では、3月までの第8期は11段階だったが、第9期に15段階へ増やした。1000万円以上の所得者は最高の第15段階となり、月額2万7747円の保険料となった。 基準額9249円の3.0倍である。基準額からの倍率は、守口市が2.7倍、門真市は2.8倍、松原氏は2.9倍とほぼ同じ水準だ。 基準額に対する倍率を高めれば高めるほど累進性が高まり、応能負担の考え方が強まる。現実に累進性を高める自治体は多い。 東京23区の倍率をみると、目黒区が4.3倍、練馬区と世田谷区は4.9倍、中野区は5倍と高く、渋谷区では8.85倍と大きい。なかでも、23区中で生活保護者が最も多く、保護率も3.38%と最も高いのが足立区。大阪府内4市は低所得者が多いことを理由に挙げているのに対して、足立区はいかなる対応をとっているのか。動きに注目したい。 足立区の保険料は前々期が14段階で2.7倍と大阪並みだったが、前期は17段階に広げて4.5倍とし、今期は19段階に高めた。最高段階は所得3000万円以上の住民で月4万3880円になる。基準額の6.5倍と大幅引き上げとなった。 同区は総介護費用の上昇は避けられない中で、「低所得者にその負担を強いないように、応能負担を強化した」と説明する。19段階のうち1段階から5段階までは本人が住民税非課税の低所得者で、高齢者の61%も占める。そのため高所得者への負担をより高めるため、倍率を大きく引き上げた。その結果、前期より基準保険料を10円引き下げることが出来た。 大阪市など4市ではなぜこうした累進性の強化が出来なかったのだろうか。「急激な変化は好ましくない」「高所得者の絶対数が少ないから効果はあまりない」と慎重な答えが返ってきた。足立区の対応と対照的だ。