借入金利「引き上げ」、許容度が上昇 日銀のマイナス金利解除で企業意識に変化
Q2.今後(概ね向こう半年)の資金調達の借入金利について、メインバンクより今年に入ってから、どのような説明がありましたか?(択一回答)
◇「金利引き上げ」に言及は30.8% 「今後の金利の話はしていない」が65.4%(4,369社中、2,859社)で最も多かった。2月調査では68.9%だった。また、「金利引き上げの可能性を示唆された」は25.3%(1,106社、2月調査21.8%)、「金利引き上げをはっきり伝えられた」は5.5%(241社、同3.7%)だった。こうした「引き上げ」に言及した企業は合計30.8%で2月調査(25.6%)より5.2ポイント増加した。 「引き上げ」に言及した企業を業種別(業種中分類、回答母数10以上)で分析すると、 トップは「洗濯・理容・美容・浴場業」の61.5%(13社中、8社)だった。
Q3.メインバンクから今後の資金調達の借入金利について、既存の利率より0.1%、0.3%、0.5%の上昇を打診されたと仮定した場合、貴社はどのように対応しますか?(択一回答)
「受け入れる」と回答した企業は、上昇幅が0.1%では77.3%(3,834社中、2,965社)だった。0.3%では37.3%(3,673社中、1,371社)、0.5%は19.1%(3,553社中、682社)で、上昇幅が増加するほど、割合は低下した。ただ、2月調査(それぞれ73.3%、34.7%、18.8%)と比較すると、「受け入れる」と回答した企業の割合は増加した。 ◇ ◇ ◇ 3月19日に日銀はマイナス金利政策の解除を決めたが、長期金利に大きな変化はみられず、円安基調も続き、住宅ローン金利も低位で安定している。政策変更が決定される前に広く報じられるなど「市場との対話」も奏功し、17年ぶりの利上げは大きなインパクトを与えていないようにみえる。ただ、企業と金融機関に限定すると風景は様変わりする。 メインバンクから向こう半年の借入金利について、「引き上げをはっきり伝えられた」、もしくは「可能性を示唆された」と回答した企業は合計30.8%で、2月調査より5ポイント以上増加した。「洗濯・理容・美容・浴場業」や「パルプ・紙・紙加工品製造業」、「繊維工業」、「道路貨物運送業」など、コロナ禍の影響や原材料・人件費などのコスト高、構造不況、法令改正の影響を受ける業種が上位に並ぶ。「金利のある世界」の入口に戻ったいま、金融機関は業種特性などを加味して、与信コストをシビアに見直しているようだ。 借入金利の上昇幅について、中小企業は既存金利より0.3%上昇した場合、「他行へ調達を打診する」との回答が半数を超え、大企業では0.5%上昇で過半を突破する。金利上昇への許容度や金融に求めるサービスは企業ごとにまちまちで、金融機関の出方次第ではメインバンクシェアが大きく変動する可能性も秘める。原材料、エネルギー、人件費に加え、借入コストも上昇する時代に突入し、企業も金融機関も生き残り競争が一層激化しそうだ。