3年前から進歩がない。サッカー日本代表が繰り返した選手への依存【アジアカップ2023現地取材コラム】
サッカー日本代表は3日、AFCアジアカップカタール2023準々決勝でイラン代表と対戦し1-2で敗れた。ベスト8という結果で大会を去ることになった原因はどこにあるのか。これまでの森保ジャパンを振り返りながらその問題点をあぶり出す。(取材・文:元川悦子【カタール】) 【アジア杯順位表・トーナメント表】AFCアジアカップ カタール2023
●最初に主導権を握ったのは… ラウンド16から中2日の過密日程というのは両者とも同じ。むしろイラン代表の方が延長・PK戦まで戦っていて、消耗度は激しい。しかも今回は攻撃のキーマン・メフディ・タレミを出場停止で欠いている。日本代表も伊東純也と旗手怜央という重要戦力2人を使えない状態ではあったが、下馬評では日本代表優位という見方が大半を占めていた。 実際、ふたを開けてみると、前半は日本代表が主導権を握り、支配率やデュエル勝利数といったデータでも上回った。冨安健洋が中心となってイラン代表のエースFWサルダル・アズムンの自由を奪い、攻撃的右サイドバック、ラミン・レザイアンに対しても今大会初先発の前田大然が強度の高い守備で仕事をさせない。前田と伊藤洋輝の左サイドがレザイアンと右MFのアリレザ・ジャパンバフシュの縦関係を封じたことも非常に大きかった。 28分の先制点も左サイドを起点とした攻めから生まれた。伊藤からパスを受けた守田英正がFW上田綺世に球足の長い縦パスを供給。この落としを受けた守田は相手DFに引っかけられながらもドリブルで3人をかわし、ゴール前に持ち込んで見事な右足シュートを決め切ったのだ。 「点はたまたま僕が取っただけ」と本人も謙虚な口ぶりだったが、数少ないチャンスをモノにし、1-0で前半を終えたのはある意味、理想的な展開だったようにも映った。だが、問題は後半だった。
●一体なぜ…。森保一監督が明かす交代策の意図 イラン代表は開始早々からジャハンバフシュのロングスローを使い、長いボールと高さを生かした攻めを前面に押し出してきたのだ。そして10分には右からのスルーパスをアズムンがキープ。反転して板倉の背後に抜け出したオハンマド・モヘビに決められてしまう。相手の巧みな連係プレーにはさすがの冨安・板倉コンビも崩されてしまった。 この8分後にもオミド・エブラヒミが蹴り出したロングボールにアズムンが反応。板倉、毎熊晟矢をかわしてゴール。完璧な逆転弾かと思われたが、オフサイドの判定に日本代表は九死に一生を得る。このあたりから冨安、板倉、毎熊、遠藤航らの疲労がじわじわと見えてきた。 ただ、そこで森保一監督が切ったカードは意外なものだった。相手の空中戦に備えて町田浩樹を入れて3バックに変更するというものではなく、守備で貢献していた前田と中盤でキープ力を発揮できる久保建英を下げ、三笘薫と南野拓実を投入。指揮官はこの交代の意図を次のように説明する。 「南野と三笘を投入して推進力を上げたかった。前日の韓国対オーストラリア戦を見て、オーストラリアが勝っている状況の中で5-4-1にして下がりすぎ、じり貧になるのも見ていた」 皮肉なものでイラン代表はこれを機により蹴り込み作戦を強化。前田の存在によって封じられていたレザイアンが次々とモヘビやアズムンを目がけて対角線のハイボールを蹴り込み続ける。それで日本代表はズルズルとラインが下がり、セカンドボールを拾えなくなり、リスタートを与えるなど、完全に相手の土俵に引きずり込まれてしまったのである。 守田は悔やむように言葉を紡ぐ。